『家族八景』に続き改版版購入。
本を意識して読むようになったのは、小学校6年の頃。以来30年以上ほとんど切れ目なく本を読み続けています。そんな中、何度も読み返す本があって、SFものでは半村良『産霊山秘録』とこの『七瀬ふたたび』(家族八景も)。
『家族八景』では穏やかな日常の裏側ではいろんな思いが渦巻いている様子をテレパス七瀬を通じて暴露する。そんな家庭を8つも見せられるともう限界、人間嫌いになっちゃいます。そこで筒井康隆は七瀬に別の舞台を用意した。それが『七瀬ふたたび』
『七瀬ふたたび』では、これまで超能力者は読心能力者の七瀬だけだったけど、同じ読心能力を持つ子供ノリオ、未来予知ができる恒夫、念動力者のヘンリー、そして時間跳躍できる藤子らが次々と七瀬の周りに現れる。透視能力を持つ西尾という男も現れるが、こいつは小悪党で結局七瀬に粛清される。
能力者は、人知れず静かに暮らしたいと望んでいるが、国家は異端を排除する方向に。某官房長官の発言にもあったけど国家の暴力を担うのは軍隊と警察。国家を守るために異端を排除する為に使われるのは、国家の暴力組織。。。
だが七瀬たちには究極の能力者漁(すなどり)藤子がいる。なんつってもタイムトラベラーだから、自分たちに不都合なことが起こったら、時間遡行してそれが起こる前に行けるんだから。まさにリアル後出しじゃんけんが可能。しかし、ここで藤子と七瀬を悩ませる。タイムパラドックスのこと。主観的に考えれば自分や自分と移動すれば問題はリセットされ今度は自分たちに都合のいい世界ができるが、移動をしていない仲間にとっては、自分たちがいなくなることでより不利な状況になるんじゃないか。それはあまりにもむごいことなんじゃないかと。
『七瀬ふたたび』はそれほど長い話ではない。だから話はテンポよく進む。一方で、読み手側の想像力をかきたてる行間もあるので、映像化されやすいのかも。
書店で平積みされている今、読んでいない方は前作の『家族八景』と合わせ是非読んでほしい1冊です。
- 作者: 筒井康隆
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1978/12/22
- メディア: 文庫
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