筒井康隆著・角川文庫
表題作含む11作を収めた短編集。「日本以外全部沈没」はすごく久しぶりに読みました。
角川文庫の筒井作品はほとんどが絶版になっており、この版も過去出ていた作品から再編されたもの。昔読んだ時は「農協月へ行く」が表題作の中に「日本以外全部沈没」が入ってました。
パニック短編というよりも、筒井康隆のスラップスティック小説を集めた感じです。
1962年から1976年の14年間で書かれた短編で、「日本以外ー」にしても「農協月に行く」にしても「新宿祭」にしても、時代性が色濃く反映されていて、果たして今の若い人が読んで面白いかは正直微妙です。
かといって「日本以外ー」の巻末に出てきたキャラクター(芸能人や政治家)についての解説があったりしても興ざめ。「新宿祭」も「昔、新宿騒乱っていうのがあってね」なんて解説したら面白くなくなります。
農協主催の金にものを言わせた海外ツアーでブイブイ言わせていたのなんて、70年代初めの頃。今の若い人たちは知らないでしょう。
そういうバックボーンを知っているととにかくシニカルで面白いんですけど、解説しちゃうのは無粋です。
最後の「ワイド仇討ち」は、明治初期の仇討ちの話ですので、ドタバタここに極まれりって感じで面白いし、大阪の居酒屋に宇宙人がやってきて大騒ぎになる「ヒノマル酒場」なんてのは、もうシッチャカメッチャカで面白い。
こういう(表面上)意味なく大騒ぎになるのは筒井SFの真骨頂ですけど、自分的にはやっぱり七瀬三部作が筒井康隆のベストだったりします。「時をかける少女」も好きですが、原作小説よりその後の映像作品の方が好きです。