昨日と今日2夜連続放映。合計4時間超の大作です。
松本清張原作「砂の器」は、なんといっても1974年松竹版が有名で、邦画の金字塔、邦画好きのマストムービーです。この74年版の映画の出来が余りにも素晴らしい為に、後に続く映像化がその呪縛からどれくらい離れるか(逆にどこまで一緒か)が作品を見る鍵だったりします。04年の中居君版などは、原作・松本清張・「潤色:橋本忍・山田洋次」と、映画原作を原作としていると言ってしまっていたりする。もっとも、時代を現代に置き換えたり、お遍路に至った経緯に“らい病”を持ってこなかったり、オリジナルキャラクターを挿入したり、21世紀版に相応しい改変を行っていて、実はそれほど嫌いじゃななかったりする。新しく千住明の作った「宿命」も主題歌の『やさしいキスをして』(DREAMS COME TRUE)もよい。
さて、今回版。実は3月12日、13日に放映のはずが、前日に起こった東日本大震災で流れたものが、半年たってようやく陽の目を見た。2月頃、新宿駅の地下街で看板が出ていてちょっと楽しみにしていたので、今回の放送はうれしい限り。
今回は、犯人を追う西蒲田署の若い刑事吉村(玉木宏)が主人公みたい。和賀英良は佐々木蔵之介。玉木君が和賀だったら「のだめカンタービレ」の千秋先輩なのになぁと思ったのは私だけではあるまい。。74年版では丹波哲郎が演じ主役だったベテラン刑事は小林薫。そういえば、それまでは、ベテラン刑事が主人公で、若い刑事が中心になったことはなかった。これは新しい試み。
ストーリーは、思った以上に原作を踏襲した作りで、映画版で重要視したお遍路の場面も上手に取り込んでいました。また、他と比べていいなと思ったのは、原作にあるベテラン刑事が若い刑事に「これからは君たちの時代だ」と言って、逮捕状を出す役を任せるシーン。セリフは「これ(逮捕状)は君が…」と、原作通りそのままの意味ではなくて、和賀と同じ境遇で苦労をした吉村が、和賀にシンパシーを感じていることを知った今西刑事といった感じでしたが。原作通りの意味と若干異なっていますが、いつまでも大人が出しゃばっていてはいけないということが伝わってきて、良かったです。他の作品ではどうだったか、少なくと74年の映画版にはなかったシーン。このシーン原作読んで感動したシーンなのです。
お遍路については、らい病が原因ではありませんでした。今後の映像化では、原作通りのらい病にすることはなくなるかもしれません。
俳優陣も頑張っており、特に、本浦千代吉(山本学)、三木謙吉(橋爪功)田所佐知子(加藤あい)が良かった。
あえて苦言を申せば、本浦千代吉が既に亡くなっていたこと。もっとも、映画版の加藤嘉の演技が最高な為、あれ以上の演技を求められるのは酷だから仕方ないか。
とかく名作の再映像化は、批判されがち。そんな中、よく頑張ったと思います。スタッフの皆さん、俳優さんにエール!