岡田麿里著・メディアファクトリー文庫(上下巻/完結)
昨年4−6月に放送された連続アニメーション(全11話)のノベライズ。著者の岡田さんはこの物語の脚本家。
本放送時に時は観ておらず、今年の2月にカラオケのお友だち、Mさんの絶大なるお勧めで、全話、パセラで視聴会があり、そこで初めて見ました。(その時のBlog→ http://d.hatena.ne.jp/hee/20120211)
小説版は、前半のみ本の雑誌「ダ・ヴィンチ」に連載されており文庫化されていましたが、今回後半部分を書き下ろし、下巻として発売、完結となりました。物語は、アニメ版を下敷きにしていますので、大きな変更点はありません。ただ小説という表現形式の為、登場人物の心情がより鮮明になっています。
本編を先に観ていますので、あの時の感動がまた蘇り、帰りの電車の中で読んでいてもう涙腺緩む緩む(^-^;)。
小説版もとても良い作品でしたが、アニメを先に観ていただいた方が、人物造形を思い描けるので、アニメを観てからの方が良いかと思います。TVシリーズなので5時間強、DVDで4枚ありますが、あっという間です。
この物語に惹かれるのは、毎日の生活の中で忘れてしまった大切な何かを感じることが出来るからです。子供が無邪気な天使で純粋な存在ではないのは、昨今のいじめの話題でも判る事(最も無邪気で純粋だから酷いことも出来るともいえますが…)。大人だって同じように残酷な一面は間違いなく持っていて、それでも「社会性」の名のもとにいろんな思いを封印していく。それは決して悪いことではないし、人はそれを「成長」と言ったりします。でも忘れてはいけないようなことまで、一緒に蓋をしてしまっているんじゃないかと思うのです。
みんな傷つきながら生きている。それを「当たり前」のこととして普通に生きているけど、積み重なった瘡蓋だって、何かの拍子で剥れることがある。それは、強い痛みを伴うものに違いありません。本当は、薄い瘡蓋の時に自然と剥れて、またもとの肌に戻る方がよいのに、人は傷を負い続け、瘡蓋の上に瘡蓋を作りながら大人になってしまいます。
この物語は、小さい頃に負った傷の瘡蓋が積み重なる前に、そのきっかけとなった少女がゴーストとなって現れることでみんなの傷を癒してくれます。無垢となった仲間たちは、ここからReスタートを切ることが出来る。Reスタートを切れず、たくさんの傷を負いぶあつい瘡蓋に包まれた大人になってしまった自分の哀しみが、この物語に触れることで涙となって少しだけ癒されるのではないかと思うのです。
見かけは今風のアニメーションですが、是非たくさんの人に見ていただきたいと思います。小説版は、ライトノベル風なので、これもまた嫌いな人も多いかと思いますが、お勧めです。
あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。(上) (MF文庫ダ・ヴィンチ)
- 作者: 岡田麿里
- 出版社/メーカー: メディアファクトリー
- 発売日: 2011/07/22
- メディア: 文庫
- 購入: 6人 クリック: 263回
- この商品を含むブログ (79件) を見る
あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。(下) (文庫ダ・ヴィンチ)
- 作者: 岡田麿里,田中将賀
- 出版社/メーカー: メディアファクトリー
- 発売日: 2012/08/10
- メディア: 文庫
- 購入: 4人 クリック: 301回
- この商品を含むブログ (15件) を見る