昔から読みたいと思ってはいたのですが、なかなか手に取る機会なくやっと読むことができました。先日「永遠の0」を読み、カミさんと映画を観に行った時、「これを読まないと」と言って差し出されました。
もともとは、戦争が終わってわずか2年後の1947年、東京大学戦没学徒兵の手記集『はるかなる山河に』が東京大学協同組合出版部により編集出版され大きな話題となり、その後全国の戦没学徒の遺書、遺稿を新たに蒐集し、1949年に初版が刊行されました。
掲載されているのは74名の遺稿。そのどれもが国を憂い、父母や兄弟姉妹を想い、恋人を思うもので、一人として「天皇陛下の為に」などというものはいない。軍の専横を心底軽蔑しつつも、運命を従容と受け入れる。
学生は、徴兵を猶予されていましたが、混迷の戦局のなか、ついに猶予が解除される。有名な明治神宮外苑の雨の壮行会は学徒動員の晴れ舞台だった。
優秀だから死んではいけないということは勿論ないのだけれど、今と違って大学に行くなんていうのは本当に優秀な人で、あらゆるシーンで活躍を約束され国の指針を左右する本当の意味での「金の卵」だった。そんな彼らさえ最前線に送り、特攻のパーツにしてしまう戦争。優秀だからこそ、自己矛盾に苛まれ、どんなに上官からいわれようと自分の信念を文字に書き起こさざるを得ない。そうして数々の検閲をくぐりぬけた言葉の持つ意味は重い。
一方で、ここで描かれる心情がビビットであればある程、この本の編集にある種のバイアスがかかってるのが気になります。つまり戦後の厭戦感を増す道具として使われていたという事実。戦争はいけない事だし、暴力や人と争う事、憎み合う事は確かに否定されるべきものだと思う。軍の暴走も大本営の無責任もそうかもしれない。だけど、全ての日本人が思った「この美しい国を守る」ということすら否定をしてはいけないと私は思うのです。天皇を守るのではない。守るのは家族や兄弟姉妹や家や生まれ育った美しい土地。それを守る為にみんな死んでいったということを忘れてはいけない。
編者によるあとがきで当時日本に併合されていた朝鮮(現韓国・北朝鮮)・台湾を植民地と表現したり、巻末年表の「偽「満州」」という表記、南京陥落の後に大虐殺という記載、自虐史観のオンパレード。
編まれた時代がそういう時代だからというのもわかるんですが、中身が良いのに巻末あとがきですべてだいなしにしてます。
とはいえ、戦争当時このような想いで死地に赴いたわずか20歳前後の若者がいた事は忘れてはいけないし、その死を無駄にしては絶対にいけないと思います。
事実に優るものなし。お勧めです。
- 作者: 日本戦没学生記念会
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1995/12/18
- メディア: 文庫
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