小林弘利著・集英社コバルト文庫
「童話を胸に抱きしめて」の3巻目。金沢市上空に簡易人工太陽"目ざまし時計"を打ちあげた耕平たち。地域限定でしかも半年という期間限定の春がやってきた。この半年でちゃんとした人工太陽を造ろうと奔走するみんな。当初人工太陽を作るためにスペースコロニーに脱出した高官科学者たちは、自分たちが安全地帯に逃げ込んだことでヤル気を失くして計画が遅々として進まなくなっていた。頼りは、地球に残った耕平を中心とした素人グループと、前巻の最後でスペースシャトルの爆発から脱出装置で間一髪助かった郁美たち科学者グループ。
暴走を始めるメインコンピュータ"アリス"は、自己矛盾を解決する為、郁美の生存を確かめないまま「郁美は生きている」というキーワードを耕平に送ることで、自分が設置されているアメリカまで来させようとする。
そんな彼の前に、巨大タンカーを率いた海賊が現れる。海賊の正体は郁美の兄で太陽停止をすっぱ抜いた科学者一太。一太の協力でアメリカに向かう耕平たち。そこに待っていたものは…。てな感じの話。
もうね、なんでもありの世界。最初からハッピーエンドと言い続けている作者だから、どんなに大変な目に逢っても安心して読み進められる。うーん、これっていい事?科学的な衣をかぶっていながら、非科学的この上ない。ガジェットはみんな科学の産物。太陽の消滅、コールドスリープ、コンピューターに戦艦、ミサイル。なのに文法がすべてファンタジーでは、子供への読み聞かせでも納得してもらえません。
もっともハリウッド映画の活劇ものも一見科学的なようでファンタジーなものは沢山ある、というか殆どがそういう作品ばかり。という事は、この作品を原作にハリウッド映画というのも全然ありなような気がします。しかも今回は日本からアメリカまで行くという場面や海戦、コンピューターの暴走とか、絵になりそうな場面目白押し。
さ、次巻最終巻。どんなハッピーエンドになる事やら。

童話を胸に抱きしめて〈No.3〉 (集英社文庫―コバルトシリーズ)
- 作者: 小林弘利,大嶋繁
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 1987/11
- メディア: 文庫
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