全五部作の「家族狩り」、ここにきて連続する一家心中事件が馬見原警部補が考える連続殺人事件として浮かび上がってくる。それと同時に登場人物たちの不幸がどんどん顕在化してくる。
みんな良かれと思って行動している。馬見原は病んでしまった妻を置き去りにしても暴力ヤクザの元旦那、油井から綾女と研司を守ろうとしている。游子は家庭を顧みず仕事に没頭して、玲子を飲んだくれの父親、駒田から守ろうとしている。駒田はなんとか家族で暮らしたいと思っているが、酒とギャンブルに溺れてしまう。油井も家族とやり直したいけど馬見原に邪魔される。
思っている事はみな一緒なのに、どうしてこうも歯車が合わないのか。それは幸せの基準がみんな違うのにそれを押し付け合っているからだと思う。
私の幸せは私にしか分からない。カミさんの幸せもカミさんにしかわからない。息子も娘もそう。幸せを共有するのが家族だというのは詭弁だし誤魔化しです。でもそれに気がつけば、相手の幸せを尊重しようとする。そうすることができて初めて家族は家族たり得るのではないかと思うのです。かつての家族は、夫が外で働きに行く環境を家族みんなで作り、その中心に妻がいて、あらゆる家事を一人で引き受けてくれていた。それは男や子供たちにとっては大変有難いことだったけど、妻にとっては否応なく家事を取り仕切る立場にならざるを得ないのはそれを望まない人にとっては苦痛だったに違い無い。雇用機会均等法が施行されて30年、女は家事から解放される機会を得たけれども、それもまた本当に幸せなのか良くわかりません。
家族のあり方は、家族の数だけある。誰も「これが正しい家族のあり方」という事はできない。
さ、次、第5部最終巻。どのように物語は完結するのか。。

- 作者: 天童荒太
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2004/04/24
- メディア: 文庫
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