ビアバー香菜里屋シリーズ2作目。5作の短編連作なので、すごく読みやすい。
「十五周年」
「桜宵」
「犬のお告げ」
「旅人の真実」
「約束」
の5つのお話ですが、最初の「十五周年」の話と最後の「約束」がつながっているので、長編を読んでいる感じ。
どれも切ないお話しでしたが、表題作の「桜宵」と最後「約束」はとても哀しい話でした。
自分の人生の中でも、人との出会いと別れってたくさんあって、気が付けば疎遠になった人もいれば、男性女性に限らず別れたくないけど別れざるを得ない人もいた。私って薄情だから、あまり想いを残さないタイプの人間だけど、それでもいろんな想いを抱きながらふとした拍子に何十年も会っていない人の事を思い出したりする。
常に想い出は甘美な衣を纏っている。嫌なこともいっぱいあったけど、そういうことは長い歳月の中で角が取れる。思い出したくもない過去は、引き出しの奥底にしまって決して表には出てこないようにする。人間の記憶は不思議だと思う。そういう想い出の取捨選択を無意識のうちに行い、整理をする。
人生は一度きりだからこそ一瞬々々をよりよく生きていきたいなと思う。だけど、思い通りにならない事なんてそれこそ毎日あって、知らず知らずのうちに人を傷つけていたり、邪な感情を持ってしまったりする。それでも生きていかなければならないのは、実は辛いことなんだけど、「人間はいつまでも未熟である」ということを常に意識しながら反省して、昨日より今日、今日より明日は少しでも成長しているように一日を過ごすことって大切だよなって思います。
直接お話には触れませんが、そういう感情を抱いてしまう物語です。
ぜひ読んでみてください。お勧め。

- 作者: 北森鴻
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2006/04/14
- メディア: 文庫
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