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「狐闇」

 
狐闇 (講談社文庫)
 北森鴻著・講談社文庫

 冬狐堂シリーズ第2作目。店舗を持たない骨董商の事を“旗師”というそう。新進の目利きで美人の“旗師”冬狐堂こと宇佐美陶子が、市で青銅の鏡を競り落としたことから悪夢が始まった。絵画贋作と泥酔運転の末の自己という罠を仕掛けられ古物商の命でもある鑑札と運転免許まで取り上げられる羽目に。競り落とした青銅鏡は2枚の海獣葡萄鏡の筈が、1枚が別のものにすり替えられていた。その鏡は”三角縁神獣鏡”しかも八咫烏を映す魔鏡。まるで天皇の御印三種の神器八咫鏡を彷彿とさせるものだった。

 北森鴻はこのお話を中心として、いくつかのスピンオフ的作品が書かれています。

・「双死神」(蓮杖那智フィールドファイルI「凶笑面」所収)
・「邪馬台」(蓮杖那智フィールドファイルIV)
・「暁の密使」
 
物語のリンクはこの3作品ですが、登場人物としては、蓮杖那智とその助手内藤三國、”雅蘭堂”こと越名集治(「孔雀狂想曲」の主人公)、ビアバー「香菜里屋」とマスターが出てくる。「狐闇」単体でも十分面白いけど、3つの関連作品と登場人物の作品を読むと立体的な展開が体験できます。


 今回の青銅鏡にまつわる明治政府の陰謀は、歴史の隙間を埋めたフィクションではありますが、この手法は半村良の描く物語に近い。実話で知られていない部分を想像力で補うことでピースを埋めて一枚の絵にする。その虚構のピースが魅力的であればあるほど物語が輝きます。

 ほんと早逝するにはあまりにも惜しい作家さんでした。

狐闇 (講談社文庫)

狐闇 (講談社文庫)