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「風をつかまえて」

風をつかまえて (文春文庫)
高島哲夫 著・文春文庫

 元日本原子力研究開発機構研究員という異例の経歴を持つ高島哲夫は、原発絡みの作品や、首都直下地震を描いた「M8」、その続編の「TSUNAMI」や東京に巨大台風が襲う「東京大洪水」などの災害小説が多い。また、エネルギー政策の根本を揺るがす石油生成バクテリアの発見に絡む事件「ペドロパグ」など、何らかのエネルギー問題を扱ったお話もある。
 このお話は、北海道の過疎の町で風力発電の為の風車を作り観光の目玉にしようとする話。2010年第56回青少年読書感想文全国コンクール課題図書(高等学校の部)に選定されており、他作品よりもクライシスレベルは低く、どちらかといえば「下町ロケット」の町の鉄工所版って感じ。

 ただこの人のすごいのは、こういった災害小説、エネルギー小説を、東日本大震災以前に書かれているということ。
『M8』(04年)、『TSUNAMI 津波』(05年)とそれぞれ6,7年前、『メルトダウン』という作品も2003年に書いています。実際に起きてはいませんが、東京での大水害を描いた『東京大洪水』は10年に文庫化08年に『ジェミニの方舟 東京大洪水』というタイトルで発刊されています。とはいえ、小説ほどの規模ではないにせよ、毎年どこかで冠水で大きな被害が出た話は起きてます。
 そういう意味でも高島哲夫の小説はもっと読まれてほしいと思います。

 風力発電についてもなんとなくわかる内容、更に過疎の町の現状などまさに現代日本の抱える問題の一つに取り組んでいて、考えさせられつつ明るい未来を予見する爽やかな後味の作品でした。
 
 お勧めです。

風をつかまえて (文春文庫)

風をつかまえて (文春文庫)