日々雑感っ(気概だけ…)on Hatena Blog

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「隠蔽捜査」

隠蔽捜査(新潮文庫)
 今野敏新潮文庫

 今野敏は、神南署シリーズをいくつか読んでいて、ハマると思いどんどん買っていたんだけど小休止して以来パタリとマイブームが去ってしまっていました。いつか読もうと思って買った本は、とりあえず"積ん読"棚に。で、隣の席で仕事をしている同僚がこの本をお勧めしていて、「そういえば持っていたなぁ」と思い引っ張り出してみて読むことにした。

 主人公は警察庁キャリアの竜崎。東大法学部出身。警察庁官房総務課長。現場というより政治的な場面、広報的な役割。朝、暴力団員が射殺される事件が警視庁管内で発生。続いて同様の事件が起きる。2つの事件の共通点は、かつて綾瀬で起きた女子高生の拉致、監禁、強姦、致死、死体遺棄をした犯人だということ。更にホームレス殺人をした犯人が殺される事件が起きる。最初の2つと次の事件は一見別の犯人のようだけど、犯行の日に規則性がある事に気が付いた竜崎は、容疑者が警察官ではないかと推理する…。


 第27回吉川英治文学新人賞を受賞しただけあって、スピード感があり、なおかつ主人公を含め登場人物の造形もよく、つい読み進めてしまいました。
 細切れの電車通勤読書の場合、のめり込めない物語だといつまでたっても読み終わらない。そういう意味では次が気になり乗り換えで歩いているのがもどかしいくらい。状況説明がほとんど会話で進むのも読みやすいポイントかも。


 主人公は正論で物事を進めていく。誤魔化すことをしない。"大人の判断"という選択はしない。そういう生き方は好き。どちらかというと私はそうやって生きてきた。恐らくもう少し"大人の判断"ができたら、出世してもっと高いお給料をもらえていたかもれないし、いい人と思われていたかもしれない。でも、そういう自分に正直な生き方を間違っていたとも思わない。100点満点じゃないけど、そこそこ及第点行ってる人生のような気がします。
 
 恐らく警察という組織は、というよりも社会というのは正論だけでは成り立っておらず、色々な場面で不本意な、不正義な判断をすることで成り立っている。だから何となくもやもやしたものが常に漂っていて、それがストレスの元だったりすると思うのです。このお話のように、正論で強引に押し切ってハッピーエンドというのは理想で、こんなのは絵空事だよと思いながらもこういう世界を実はみんな望んでいる。だからこそ主人公竜崎の行動に拍手喝采を贈りたくなるんだよなぁ。


 警察小説だけど刑事ものとは一味違う、横山秀夫の警察小説とかに近い。
 面白かったです。お勧め。

 

隠蔽捜査(新潮文庫)

隠蔽捜査(新潮文庫)