1968年2月8日だけの話。
ルポライター風間が連れてきた作家、土屋香と丈の姉三千子との無名塾事務所での対談。そこにこの数週間ですっかり東丈の代行となった郁江とサポートグループ(通称親衛隊)が到着。康夫と一緒に同席する。
内容は多岐に渡るが、印象に残るのはキリスト教の矛盾と欺瞞について。三千子も土屋もキリスト教に入信しなかったのは、自分を信じれば救われる、信じないと救われないといったカミとは思えない偏狭さだという。またちょっとしたことで神は怒り、大災厄を現すというのも納得できないという。
対談だけでほぼ1冊。もう物語の本筋からは完全に離れてます。登場人物に宗教論を語らせているだけ。これでも当時ベストセラーになってしまうのだから、幻魔大戦の吸引力はすごかったのです。しかも残り2巻でいきなりの第1期完結。読んでる方は何が何だかです。徳間の「真幻魔大戦」も同じく東丈は失踪し、舞台は古代日本、そして超古代ムウ文明の時代に移っていってしまい、大風呂敷を広げたまま続々と中断していきます。
その後ウルフガイ(ヤングの方)の続編にいきなり取り掛かるものの、これまた主人公の出ぬまま5巻(狼のレクイエム第3部・黄金の少女篇)出てきたと思ったら、なんだかダラダラと進む第4部(犬神明編)にて完結。こういう続き読みたかったわけじゃないんだけどなぁ、と思いましたが、なんといっても作者が著しているわけだから致し方ありません。
幻魔大戦のグダグダは何も18巻で明らかになったわけでもないのだけど、それにしてもこの巻はなんとも形容しがたい内容。"言霊使い"といいつつ、著者が当時思っていたことを「幻魔大戦」の1巻として書いてるに過ぎない印象。
最後の方で、郁江を襲った塚本組の兄貴分山本が田崎と康夫が訪問するシーン、田崎と康夫が過去世の事を振り返り議論をするシーンで「新幻魔大戦」の後日談が描かれているのは刮目。東丈の前世、由比正雪が幻魔の力を借り魔道に落ちた後、お時との死闘で一度は灰になったが復活したところで終わった「新幻魔大戦」。歴史としては慶安事件は正雪の死で終わるけど、陰で幻魔どのように暗躍したかが本当は気になるところ。
さて残り2巻。伏線は一向に回収されそうもない(というか再読なんで結果は知ってますが)。それでも読み進む気持ちは抑えられない。
ちなみに初版ではこの巻は表紙は大友克洋でした。

- 作者: 平井和正
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
- 発売日: 2014/12/20
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