戸部 良一,寺本 義也,鎌田 伸一,杉之尾 孝生,村井 友秀,野中 郁次郎共著・中公文庫
1984年初版・91年文庫初版
実に30年以上、文庫化されてからも25年以上読み継がれているのには理由がある。他の戦記ものと異なり、私情を排して日本軍という組織の在り方を分析し、現代のすべての組織に当て嵌まる普遍的な組織としてのウィークポイントを相木らかに空いている点にある。その為特に経営者財界人がこぞって絶賛、リーダー育成のテキストにもなっています。
日清日露戦争を勝利し世界に関たる国として世界に名を連ねた大日本帝国。その時の成功体験から学ぶことを忘れ、前例主義が蔓延、成功パターンをいかになぞるかに腐心する。満州では関東軍がソ連と対峙、南方では植民地経営をしていたイギリス、フランス他ヨーロッパ各国と、そして太平洋を挟んだアメリカとも戦闘状態に入る。戦法は、陸軍は奇襲作戦による各個撃破、海軍は大鑑巨砲による艦隊決戦という過去の成功体験に基づくもの。一方のアメリカは、初戦の失敗から多くの事を学んで、ミッドウエー以降連戦連勝。
・情報不足
・慢心
・思い込み
林修先生が、言っていた「負ける人物の3つの共通点」がここでも当て嵌まります。
時代は刻々と移り変わっていうのにそこに目を向けない。挙句の果てに精神論で片付けようとする。神国日本は絶対に負けない、となんの根拠もないのに戦陣訓とされる。
そもそもアメリカを仮想敵国として研究を重ねた海軍ですら、短期決戦なら一泡吹かせられるが、持久戦は持たないといっていたわけで、しかもアメリカだけでなく前方いに喧嘩を吹っかけて勝てるだけの蓄えはない。
しかしながら、戦後70年以上経っているのに、いまだに旧帝国軍の頃の組織論が蔓延しているのが日本であることも事実。経営者だけでなく、国民の心情がこの失敗の本質に気が付かない限り、また同じ過ちを繰り返さないと誰がいえよう。
経営者のみならず、沢山の人が読むといい名著です。

- 作者: 戸部良一,寺本義也,鎌田伸一,杉之尾孝生,村井友秀,野中郁次郎
- 出版社/メーカー: 中央公論社
- 発売日: 1991/08/01
- メディア: 文庫
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