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「異端の大義」 を読む。

楡周平著・新潮文庫
 楡周平作品は、「Cの福音」でデビュー以来、殆どの作品を読んでいます。同じ新潮文庫で出た前作「再生巨流」に引き続いて、新潮で文庫化されたのはまたもビジネス小説でした。デビューから数年は、クライムノベル、冒険小説が多かったのですが、元々楡さんは、外資系の会社に勤めていたサラリーマン。こういったビジネス小説を描く土壌はあったという事。
 
 このお話は、大手電機メーカーのエリートサラリーマン高見龍平が、会社の期待を背負って進出したシリコンバレー半導体開発部門の撤退が無事済んで、帰国の途につくところから始まる。一時は未来永劫続くと思われていた半導体バブルがはじけ、半導体事業部そのものが”お荷物”となった会社は、半導体事業部を分離してライバル会社と合併させ半導体新会社を作ろうとする。合併は単に両者の事業部を合体させるわけではなく合理化をはからなければ合併のうまみはない。そこで次の仕事として高見に任じられたのが、岩手にある工場閉鎖。つまりはリストラの指揮を執ることになる。入社以来、研究開発に従事してきた高見が、何故人事系の仕事につかねばならないのか。それは、ひとえに同期でもある人事部長の不興をかってしまったから…。とここまでが前半。

 能力主義とか成果主義とかいってバブル崩壊以降アメリカンな経営手法を導入していますが、20年経ってその間違いに気がついた会社は少なくない。有名大学、新卒重用とか、暗黙の差別をしたりしても大多数がその枠組みに含まれればマイノリティの意見など拾われるわけがない。サラリーマンにとって、上昇志向のある上司にすり寄って覚えめでたくスイスイ出世していくのも一つの生き方ですので否定もしませんし、ある意味サラリーマンとしては正しい生き方なんだと思います。私にはできないけどね。
 この主人公も組織人であることを十分認識し、次の仕事としてかつての仲間だった岩手工場の800人を会社存続の為にリストラする役目を担うが、単に会社の言われたままドライに仕事を進めるのではなく、自分なりに最善のと思われるやり方を提案し実践していく。しかし上司とすると自分の思い通りに動かない高見が気にいらない。
 そこで人事は更に高見を販社部長に異動させる。研究専門の人間を営業に。明らかな私怨による人事異動。しかも着いたセクションがどうあがいても売り上げ向上の望めない部門。ここにきて高見もついに転職をする事に。

 丁度主人公の年齢と一緒位なので、特にシンパシーを感じながら読むことができました。
 腐りきった企業人は読んでも何も感じないかもしれませんが、腐りかけ位ならばこの本を読んで軌道修正してほしいですね。
 

異端の大義〈上〉 (新潮文庫)

異端の大義〈上〉 (新潮文庫)

異端の大義〈下〉 (新潮文庫)

異端の大義〈下〉 (新潮文庫)