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「東京大洪水」 を読む。

 
 高嶋哲夫著・集英社文庫(初刊タイトルは「ジェミニの方舟―東京大洪水」)

 『M8 エムエイト』、『TSUNAMI津波』、『ジェミニの方舟 −東京大洪水−』と続いた災害三部作。世界も一緒で、時系列的には、『M8 エムエイト』で首都圏直下型地震が起き、『東京大洪水』で超大型台風が上陸、『TSUNAMI津波』で東海、東南海、南海の三つの海溝型地震が起きるというもの。
 
 昨年の3.11の大震災、先日も季節外れの大型低気圧で、帰宅命令が出て首都圏の鉄道は大混乱。昨年夏も台風の影響で同様の事が起きました。まさにこの小説と同様の出来事で、事実は小説より奇なりとは良く言ったものです。
 すごいのは、この小説の初出年。『M8 エムエイト』が2004年、『TSUNAMI津波』が2005年、『ジェミニの方舟 −東京大洪水−』が2008年と、まるで現在の状況を予見しているかのようなタイミングで書かれています。

 こういった災害について警鐘を鳴らすと「不吉だ」とか「不安心理を煽る」とか言って嫌う人がいますが、現実問題として東日本大震災が起き、関東でも大規模な地震が起きると言われていて、更に先日の暴風雨のような、これまで考えもしなかった自然現象が起きている状況で、それでも何の準備もしていなかったらその場になって慌てるだけ。
 
 この3部作は、単に災害をシュミレートしている技術書ではなくあくまでも小説ですので、大変読みやすい。
 科学者がこれらの災害を予見してしまい、なんとか災害に対する備えをしようとするけど、殆どの人は耳を貸さず、先見の明のある政治家、行政官が、独断で準備を進める。そしていざ災害が発生すると、科学者は最前線に巻き込まれ自衛隊や防災本部で八面六臂の活躍をする。更にこの災害をに直面し被害を最小限に食い止めようとする人々が丁寧に描かれていて読後感も良い。

 この手の小説に限らず、特に小説を読むことは"人生の追体験"だと思います。仕事でいえば、よく研修の講師の人はビジネス書やノウハウ本を紹介しますが、「知識を得る為に読む」というのでは、判ったつもりになっても精神には響いていない。だから私は、その手の本を読むくらいなら、城山三郎山崎豊子大下英治楡周平真山仁なんかの経済小説を読んだ方がよっぽど血となり肉となると思います。それは、何故か。困難に立ち向かう時の精神状態までは、ノウハウ本には書いていないからです。私たちが知りたいのは理論ではないはず。リーダーとは如何にあるべきか、そんなことはノウハウ本では身に付きません。

 災害小説も同様。災害に対してどのような準備をするかも勿論大切ですが、その場に直面した時にどう行動するか、その時に精神状態はどうあるべきかを教えてくれます。

 地球はこれまでと違った様相を呈し始めています。地震も活動期に入ったといわれています。であればそれに備えるためにも、高嶋哲夫の災害3部作は是非読んでほしいです。
 お勧め。時系列は、『M8 エムエイト』『東京大洪水』『TSUNAMI津波』。共通の登場人物もおり、楽しめます。

東京大洪水 (集英社文庫)

東京大洪水 (集英社文庫)

他2作↓
M8(エムエイト) (集英社文庫)

M8(エムエイト) (集英社文庫)

TSUNAMI 津波 (集英社文庫)

TSUNAMI 津波 (集英社文庫)