零式艦上戦闘機、通称零戦の三菱重工主任設計し堀越二郎自ら著した零戦開発記。1970年、1984年に刊行され、宮崎駿監督「風立ちぬ」公開に合わせ角川で05年復刊された本です。
軍からの矛盾した要求に屈することなく知恵を絞り世界最高の戦闘機を作る。往々にしてできない事は最初から諦めがちですが、制限があればあるほど、それをどうやってクリアしていくかという気概を持って仕事をすることの大切さを改めて思いました。
パイロットの思い通りに機体を操縦でき緒戦においては向かうところ敵なし、アメリカ軍は「零戦と格闘戦をしてはならない」「背後を取れない場合は時速300マイル以下で、ゼロと空戦をしてはならない」「上昇する零戦を追尾してはならない」と3つの禁忌をパイロットに通達したといわれています。その一方で、2000kmを越える航続性能は操縦士に苦痛を強いる。空母での移動ではなく基地から飛び立って1000km先の敵基地を攻撃できたものの、往復10時間以上も狭いコクピットに押し込められる。更に戦争末期には特攻兵器になり下がり、主任設計士の堀越の心は重く沈む。
私たちの世代であれば、一度は零戦のプラモ、作ったことがある。それくらい戦闘機=零戦は刷り込まれています。
末期の神風特攻隊は悲劇ではあるけれど、殺人を犯すのは犯人が悪く、包丁が悪いわけじゃないのと同様、零戦に罪はない。今でも零戦は美しい機体だと思います。まさに「神は細部に宿る」を表した飛行機。しかし神を宿らせるのには、堀口をはじめたくさんの技術者、テストパイロットが心血を注いだ結果。言いたいことを言っただけの軍令部はこの際除外。
今もそれって一緒で、言いたいこと言って責任を取らない経営者に翻弄されるのは、常に中間管理職以下。日本型経営は、この時の悪習が残った感じです。
それでも日々の仕事に一生懸命取り組んでいればよい事あるかも…。
仕事をして悩んでいる人、特に技術系の仕事をされている方には特にお勧めです。
- 作者: 堀越二郎
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2012/12/25
- メディア: 文庫
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