白石雅彦著・双葉社(ソフトカバー)
「「ウルトラQ」の誕生」「「ウルトラマン」の飛翔」「「ウルトラセブン」の帰還」に続く、円谷プロ盛衰記。
ウルトラセブンも後半に入り、視聴率が低下している中、フジテレビで大人をターゲットにした1時間ものの特撮ドラマ「マイティジャック」が満を持して放送されるも、期待以上の視聴率が得られずわずか1クールで、30分ものの子供向け「戦え!マイティジャック」に路線変更。それと並行してTBSで終了した「ウルトラセブン」の後番組として円谷プロが世に送り出したのが「怪奇大作戦」。
どちらかといえば「ウルトラQ」に近いけど怪獣は出ない。ファンタジーではなく、科学を悪用した犯罪を科学の力で解決に導く。
ウルトラシリーズは知っていても、その流れで制作された「怪奇大作戦」は知る人ぞ知る作品。オタクの人にとっては一般常識でも一般の人の口の端にのぼることはまずない。でもこの作品は、私的には、ウルトラセブンからSF的要素を外し人間ドラマを主軸にした大人のドラマと思います。
誰もが心に持っていて、何かきっかけがあれば噴出しかねないドロドロとした思い。犯罪は決して許されない事だけど、常に割り切れない思いが残るドラマ。正味20分弱でここまで人の本質に迫るドラマはなかなかありません。
そういう思いを持ったクリエイターは確かにいて、放送終了後それほど再放送もされないのに、天下のNHKで2度もリメイクされていることからも、このドラマのポテンシャルがうかがえます。
さてタイトルは「「怪奇大作戦」の挑戦」とありますが、お話は「マイティジャック」制作の混乱から始まります。なので、時期的には「怪奇大作戦」制作前から終了に至るまでの円谷プロの歴史になっています。
そして最後は円谷英二の死。
第1次怪獣ブームが去り、予算を掛けられない中で作られた作品群。しかしその後そんな苦境の中で過去のウルトラシリーズのフィルムからバトルシーンを抜き出し、更に倉庫に眠っていた使い古しの怪獣を山の中で戦わせる5分程度のミニ番組「ウルトラファイト」と「ウルトラマン」「ウルトラセブン」の再放送によって、第2次怪獣ブームがやってくる。
私は丁度5-6歳で、第2次怪獣ブーム世代なんですよね。「怪奇大作戦」本放送の頃は当然見ておらず、20歳を過ぎた頃ビデオが出て後追いでファンになった口。
この本では一切触れられていませんが、「怪奇大作戦」には現在欠番となっている「狂鬼人間」(第24話)というお話しがあります。いつの頃からか欠番になり、その理由は円谷プロからの正式コメントは出ていないので、今も憶測の域を出ません。
現状では出版物で言及する状況にないという事なんでしょう。ただ発表はされなくても、関係者がどんどん鬼籍に入る中、白石さんのような方によって、資料の散逸を防ぎ、しっかりとインタビューをして影ながら記録に残しておいてくれる事を切に願います。

- 作者: 白石雅彦
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2019/03/13
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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