原作/西荻弓絵 漫画/飛松良輔
原作の西荻弓絵さんは、TBSドラマ「ケイゾク」「SPEC」の脚本家さん。
実在の弓術家、星野勘左衛門の若き日を舞台とした漫画、全6巻。新刊の時に買っていたんですけど、やっと最後まで読みました。
三十三間堂の通し矢は、今では成人の日に振袖を着た娘さんが弓を引くので有名ですけど、そもそもは江戸時代にお堂の軒下三十三間(約120m)を一昼夜かけて弓を引く競技に由来します。
軒下なので、高い放物線では、軒にあたってしまう。120mを射通すだけでも大変です。
勘左は、寛文2年(1662年)100025射中6666中で天下惣一を成し遂げ、その6年後紀州の葛西園右衛門に9,000射中7,077中で抜かれますが、翌年10,542射中7,077本で天下惣一を奪還、貞観3(1687)年、紀州、和佐大八郎の13,053射中8,133中、藩の名誉を掛けた通し矢で、記録を破れないと切腹をするという事態も起き、通し矢の歴史は幕を閉じます。
和佐大八郎の記録でいうと、1時間で544本射てる。ということは平均9本/分で射ることに。今の射では、型通りやるには打ち起こしからでも1本射るのに20秒はかかりますから、1分で2,3本がやっと。いくら矢を渡してくれたり、傷んだ弓や弽を替えてくれる人がいたとしても絶対無理です。
こんな時代に弓やってたら私なんか切腹しすぎて挽肉になっちゃいますわ…。もっともその前に代表になんかなれないですけど(^^;)。
「天を射る」は、青春ものですから、勘左が尾州の代表として通し矢に挑むまでは描かれません。でも、こういった記録を打ち立てた人だという事すら触れられていないのは残念です。
物足りなさは残りますが、弓道って、学生弓道の恋愛もの、青春ものが多い中、硬派な弓道ものという意味では、良作です。
「通し矢」については、平田弘史「弓道士魂」が、史実に沿って描かれておりこれは内容、迫力とも至高のものだと思います。勘左の行く末を知りたい人は是非こちらを読んで欲しいです。