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「地球に落ちてきたくま」 を観る。

 1982年小中和哉監督。自主制作8mm作品。今回は、「地球に落ちてきたくま」と「くまちゃん」のW上映。こんな機会は今までにない貴重なプログラム。
 小中監督は、少年の頃から、兄の小中千昭さんと8mmを回して作品作っていた根っからの映画人。「地球に落ちてきたくま」は大学1年〜2年にかけて制作された作品。上映時間60分。8mmで60分は大作です。
 冒頭、スターデストロイヤー風に画面に入ってくる宇宙船。その宇宙船が女子高生の家にいきなり突っ込んでくる。コクピットから現れたのは、クマのぬいぐるみにしか見えない宇宙人。学校についてきてしまったくまちゃんは、おとなしくしているわけもなく、同級生の発明好きの少年の持ってきたロボットの中身を抜き外身をかぶり、学校中を駆け回る。一方くまちゃんは敵対勢力を追われていて、その追いかけっこに女子高生も巻き込まれる。
 全編SFXバリバリで、これが若干18,9歳の作品とは思えない。ラブストーリーも絡めつつ、素人にありがちなストーリーの破綻もない。演技云々は、自主制作映画で求めてはいけない。とはいえ、主演の津畑富貴子さんは、今みても充分かわいい。大学卒業と同時に俳優を辞めてしまったとのことですが、卒業記念に制作されたイメージビデオ風短編(これは『落ちくま』の続編、再び地球に訪れたくまちゃんと女子高生の再会を音楽だけで綴っている)も、今見るとちょっと恥ずかしい感じだけど「あーそういえばアイドルのイメージビデオってこんな感じだったよね」と思わせるもの。出てくる女の子が、みんな"聖子ちゃんカット"なのも笑えます。そーいえば、世の女の子の殆どが聖子ちゃんカットをしていた時代でした。
 その後「落ちくま」をリメイクした商業映画「くまちゃん」を上映。この作品「落ちくま」のリメイクとして語られる事が多いけど、厳密にいえばリメイクではないですね。全然お話違うし。前回4月に観て以来2回目ですけど、いい映画です。年の離れた芸術家(草刈正雄)と若手の舞台女優(川合千春)の恋。約束は責任を伴うから守れないかもしれない約束が出来ない中年男と、そんな煮え切らない彼の態度にもやもやする舞台女優。最近晩婚化が進んで、私から見てもこういう煮え切らないいまだに独身の男が大勢います。「結婚がすべてではない」という価値観で無理やり武装してはいるものの、本当にそうなのかな?実際は結婚できない事の言い訳にしているんじゃないだろうか。人間は、お互いに傷つけ合いながら生きている。約束を守れないことだって当然ある。でも、約束を守ろうとか、真剣に対応しようという気持ちをお互いに持つ事ができれば、まずはそれでいいんじゃないかと思う。金八先生も言っていました。「人は一人じゃ生きられない。支え合って初めて"人"という字になっている」と。

 さて、2本の映画と「落ちくま」の予告編、上記の続編(風イメージ映画)の上映が終わり、いよいよ千昭さん小中監督のトークタイムに。落ちくまは1982年8月1日に池袋・文芸坐の「スーパーSF日本特撮映画大会」で初上映されましたが、完成はその日の朝。で、その後もリテイク、撮り足し、録音をし直し、完璧版として11月に公開されました。作品完成までにほぼ丸2年掛かっています。しかし、これだけの作業をしながら大学をちゃんと卒業しているのはある意味偉いです。
「くまちゃん」の制作にあたって、実はその前に「小中兄弟不仲時期」というのがあって、作品の志向が異なり、一緒に映画製作をする事が無くなっていた時期でもあったそうです。それが、「くまちゃん」をきっかけに和哉さんは監督として、千昭さんは脚本家として仕事をするようになる。
 「くまちゃん」の音楽は全編JAZZ。選曲と一部演奏を千昭さんがやっています。物語の雰囲気にはとても合っていますが、「くまちゃん」というタイトルと大人の恋愛話というギャップで決して大当たりとはいかず、この作品制作の為に設立された「こぐま兄弟舎」もこの一作で1千万の借金を抱えて以降制作作品はないとのこと。
 くしくも今回の上映は「こぐま兄弟舎20周年記念プレイベント」という形で行われ、トークの最後には、記念のクリスマスケーキが登場。仲良く2本のキャンドルを吹き消してる姿は印象的でした。

 今回の上映会参加されたのは監督関係者を含め10人に満たずとてもアットホームな会でした。小中監督絡みのお宝グッズも来場者にプレゼントされ、私は、「星空のむこうの国」本上映(1985)のころから欲しかったサウンドトラックテープ(この頃はまだCDは出始めの頃で、自主制作CDなど夢の時代でしたね)と、文芸地下での上映告知付「星空―」のポスター、「落ちくま」のパンフレット+「くまちゃん」絵コンテ抜粋(いずれもコピー)を戴きました。
 上映会後は、隣のバースペースで飲み会。色々な映画にまつわる話をしながら過ごすクリスマスイブ。Yahoo星占いで1位97点だった今日。まさに25年ぶりの願いの叶った夜でありました。

 惜しむらくは「くまちゃん」はDVDされていない事。音楽の権利関係で費用が掛かりすぎる為難しいとのこと。残念です。小中監督からは「自分の映画が大当たりしたらその余剰金で作りましょうかね」と。小中和哉全仕事とかDVDBOX作りましょう!その際は「地球に落ちてきたくま」はじめ8mm時代の作品も全部デジタル化して。夢はどんどん広がります。
こんな時代だからこそ、また”くまちゃん”に地球に来てもらって勇気のない男女の間に入ってもらいたいなぁと思いました。是非再々リメイクしましょう。
ほろ酔いの頭を寒風でひやしつつニコニコしながら家路につきました。
小中監督、千昭さん素適な夜をありがとうございました。またやりましょう!