有川浩著・幻冬舎文庫。
阪急電鉄の宝塚駅から西宮北口駅までの今津線(路線距離9.3km)に乗り合わせた人々のチェーンストーリー。
生まれてから関東以外に住んだことがないので、土地感が全くなく、「阪急電車」をカミさんが読んで「面白かったよ、読んでみる?」と言われた時もそんな理由で食指が動かず全然読む気になりせんでした。
映画になったのも知っていましたが、同様の理由で観ておらず、先週TVで放映されていたのを何気なく観ていたらとても面白く、改めてカミさんに借りて読みました。「貸してくれる?」っていったら、その時の事を憶えていて「だって、イメージ湧かないから読まないって言ってたじゃん!」とか意地悪な事を言われながら…。
で、まあ読んだんですけど、映画を観ていたのでイメージしやすくサクサクっと読めました。映画の方はかなりデフォルメした演出でしたが、原作はあっさりとしていて、原作を先に読んでいたら、映画の評価はもう少し低かったかも。お話も冒頭とラストの図書館で知り合う本好きの2人の話が丸々カットされていたのは残念ですが、余り登場人物が多すぎると判りにくいから丁度よいし、映画だけしか観ていなかったら、それはそれでよくまとまっていました(この2人、征史とユキのお話は、スピンオフとしてドラマ化されていたらしい)。でもま、この2人の話、本好きな自分としてはシンパシーを感じる話だったので、この話の入っている原作の方がどちらかというと好きですね。ただ、電車の中で大騒ぎしているセレブで下品な奥さまグループと孫を連れた品のいいお婆様が対立する場面は、映画の方が良かったかな。キャストもイメージ通り。
毎日電車に乗っているけど、あくまでも移動手段。電車が予定通り目的地に着く事さえできればよい。車内では、本を読んだり音楽聞いたりして、できる限り気配を殺し、ぶしつけに誰かに視線を投げかける事なく時が過ぎるのをじっと待つ。でも、例えば荷物を網棚に上げてあげたり、席を譲ってあげたり、満員電車で更に押しこまれる時に、前にいる女の子を庇ってあげたり、そんなことをして感謝されたりすると、なんかそういうちょっとしたいいことで「生きててよかった」と優しい気持ちになれたりする事があるのも事実。逆に莫迦な若者のシャカシャカ音漏れやうるさいおしゃべり、臭いおっさん、押しこまれただけなのに舌打ちする奴、頑として自分の位置をキープしようとする奴、ドア前に立っていて開いているのに降りない奴等々嫌な眼に逢う事も多いけど…。
みんないろんな想いで電車に揺られている。改めてそんなことを考えた1冊でした。
特に大きなドラマがあるわけじゃないけど、意外と好きです、こういうお話。
お勧め。
- 作者: 有川浩
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2010/08/05
- メディア: 文庫
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