三上 延 著・メディアワークス文庫
「ビブリア古書堂」シリーズ5冊目。今回は手塚治虫の「ブラックジャック」と寺山修司第一作品集「われに5月を」を中心に謎が展開されていきます。
前巻の最後で栞子さんに「俺と付き合ってください」「あなたのこと、ずっと好きでした」と告白したものの、返事はお預けになっている五浦君。まるで中学生のような恋愛の進展にやきもきしながら、これくらい純粋な恋愛って微笑ましく、懐かしい感じでとてもよい。
蘊蓄の「ブラックジャック」と寺山修司の部分については、もはや自分的にはどうでもよい。ブラックジャックについては私も昔から結構好きで、未収録の「植物人間」も「快楽の座」も読んだことあるし、手塚治虫の単行本化の時に書きなおす癖についても既知の事。寺山修司の作品に触れたのは、映画の「田園に死す」とか「書を捨てよ町へ出よう」くらいで、天井桟敷の演劇も詩や短歌にも余り触れたことがなかったので、今回改めて栞子さんに教えてもらいました。
基本五浦くんの一人称小説ですが、お話の間に断章が3つ入っていて、それぞれがサブキャラクターの一人称になっているという構成は今回初めてじゃないかな。これがまた作品世界の奥行きを広げる役目をしていてとても良い。
最後は…。やめときましょう。まだまだお話は続きます。少しづつ進展していく栞子さんと五浦君の仲も楽しみ。
次巻が待ち遠しい連作長編です。
あ、読まれる場合は、一巻から是非。