トクマノベルズ・夢枕獏著
「闇狩り師 蒼獣鬼 妄霊篇/異神篇」として85、86年にトクマノベルズ2巻で出ていたものを合冊したもの。勿論、初見はそっち。30年近く前。「闇狩り師≪新装版≫」に引き続き読みました。
前巻は短編でしたが、この巻から長編になります。乱蔵の師匠真壁雲斎から磯村小百合と鳴神真人の事を託される。鳴神真人に何かが憑いているらしい。真人に害なすものは怪我をしたり死んでしまったりする。鳴神真人と磯村小百合は、陰陽師鳴神素十の子。そして素十が狙うのは希代の霊能力者で齢100歳を超える戸田幽岳。この鳴神素十と戸田幽岳の心霊対決に乱蔵が巻き込まれるって話。
この頃の夢枕獏は「キマイラ」シリーズや「魔獣狩り」で、エロスとバイオレンスの名をほしいままに乗りに乗ってる頃。暴力シーンやグロテスクなシーンをこれでもかというほど描きながらリズム感で読ませるので後味は決して悪くない。ただこのお話では乱蔵はそれほど活躍することはなく、そういう意味では前巻の短編の方が個人的には面白かったりまします。
真壁雲斎が台湾に行く為にこの仕事を乱蔵に任せるくだりも、その頃雲斎は「キマイラ」事件に掛かりきりだという状況も、キマイラを読んでいると分かって更に面白かったりします。次巻「崑崙の王」では、「キマイラ」で異彩を放つキャラクター龍王院弘がこちらの小説に出てきたりして更にクロスオーバーが加速していきます。それにしてもキマイラはどうなったんだろう。30年以上前から書かれているけど物語の中では1年くらいしかたってない。最近は昔話ばかりで先に進んでない。そろそろ完結させないと筆者の寿命が…。
いろいろ思うところはありますが、面白い事には違いありません。この調子で次の新装版読もうっと。そーいえば、「魔獣狩り」の最終2巻も積んであるままだ…。