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「ナツコ 沖縄密貿易の女王」

奥野修司著・文春文庫

ナツコ 沖縄密貿易の女王 (文春文庫)

 現在文春文庫で出ている奥野修司さんのノンフィクション4冊はこれで全部読めた。奥付にあって読みたいと思っていて、やっと読むことができました。
 ナツコ、金城夏子は沖縄県島尻郡糸満町に出生(一説では鹿児島県徳之島生まれ)、戦後の混乱期に沖縄−東南アジア間で精力的に密貿易を行っていた"女傑"の名に相応しい人物で、まさに知る人ぞ知る女性ですが、密貿易という性格と、戦後の数年間という短い期間、そして混乱が納まってから表舞台で活躍をしたわけでもない為、一切記録に残っていない伝説の人物。沖縄でナツコというすごい女性がいたことを耳にした著者が、たくさんの関係者、子孫にインタビューをし、記録を調べやっとその実像に迫った労作です。


 現在の沖縄は、南国リゾートと基地問題で終始してしまいがち。また歴史をたどればどうしても壮烈な沖縄戦での悲劇の島として描かれるますが、戦後の一時期、密貿易によって、辺境の与那国島が都会をもしのぐほどの賑わいをみせていたというのは、また違った一面を知ることができました。
 ナツコは、類まれな情報収集力と胆力で、荒れる海をものともせず男たちを従えて東南アジア諸国との交易によって、巨万の富を築く。ところが、後年には自分の病気の治療費も厳しくなる。これぞという人にある時払いの催促なしで貸してしまう。38歳という若さで亡くなった時には段ボール10箱以上にたくさんの借用書があったといいます。


 20万人近くが亡くなった沖縄が数年で不死鳥のように蘇る人間の可能性、したたかさを強く感じました。
 人ってやっぱすごい。

 

ナツコ 沖縄密貿易の女王 (文春文庫)

ナツコ 沖縄密貿易の女王 (文春文庫)