これまで洋泉社は別冊映画秘宝/映画秘宝EXとしてMOOKを沢山発行していて、これがまた映画オタクの心をくすぐる微妙なラインナップで興味がある奴は結構買っていました。
今回の「衝撃の「実録映画」大全」、中身はこれまで同様1テーマごった煮、MOOK時代と同様の編集内容。でもカバーが掛かって単行本形式になっています。
「実録映画」実話を基にした映画19本について17人の執筆者によって書かれています。読みたかったのは本橋信宏さんが書かれた「恋の罪」(園子温監督)について。相変わらず優しくて好きな文章です。
「恋の罪」は1977年に渋谷区円山町で東電OL殺人事件を基にした映画。実録映画というよりもモチーフにしたと呼んだ方がよい。同じ園子温監督の「冷たい熱帯魚」も高橋ユキさんが執筆されていますが、こちらも1989年に起こった埼玉愛犬家連続殺人事件をベースにした作品で、これも実録映画とは言えないんじゃないかなぁ。
できる限り事件に忠実の描いたのは熊井啓監督作品。この本では「帝銀事件 死刑囚」(1964年)「日本の熱い日々 謀殺・下山事件」(1981年)ただ、これもまた、戦後の謎の事件として真実は闇の中なので、映画では監督の想像で描かれています。
つい実録映画というと真実を語っているように思ってしまいがちですが、結局実録映画というのは、ドキュメンタリーではなく、あくまでも実話に材を取ったフィクションだということを忘れてはいけないと思います。
「八甲田山」(1977年)も実話と思って観ていた時期がありましたが、これも細かい部分ではずいぶん史実と異なります。元々この映画の原作は新田次郎著「八甲田山死の彷徨」最後生き残った山田少佐(三國連太郎)もあそこまで悪い人間ではなかったということを最近知りました。
かように、物語を盛り上げる為や主人公のヒーロー性を際立たせる為などの理由で、極端なキャラクター作りをされる場合がある。この本にはありませんが「タイタニック」で、マードック一等航海士が騒ぐ乗客を銃で撃ってその後自殺するのも実話ではない(確証がない)。事件や事故の一部始終か明らかになっていない以上、創作される部分か必ずある。
ただ、実話、または実話を基にした映画というのは、完全にフィクションの映画と比べると画面は地味だけど、実話の持つ迫真性が結構好きです。この本で取り上げられている作品でまだ観ていないものも結構あるので今度観てみようと思いました。
- 作者: 映画秘宝編集部
- 出版社/メーカー: 洋泉社
- 発売日: 2016/07/09
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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