白石 雅彦著・双葉社
「「ウルトラQ」の誕生」「「ウルトラマン」の飛翔」に続く第1期ウルトラシリーズの成立についてのノンフィクション。
ウルトラシリーズは、第1期の3作とリアルタイムの「帰ってきたウルトラマン」まではかなり好きなのですが、特に「ウルトラセブン」が好きなので、前2作はまだ読んでいません。
高視聴率だったものの費用が掛かり制作も押し気味だった「ウルトラマン」が終了し、東映制作の「キャプテンウルトラ」がTBSとしてのウルトラシリーズ第3弾として半年放映。その間を利用して「ウルトラセブン」の制作が開始されました。
大人の鑑賞にも耐えられるSFドラマを描きつつ、これまでの子どもたちにもわかりやすくといった、ターゲットの曖昧さが如実に視聴率にあらわれる。とはいえあくまでも「ウルトラQ」「ウルトラマン」と比べての視聴率の悪さ。この2番組は平均30%越えのお化け番組。悪いとはいえウルトラセブンも25%を越えている。
最後まで視聴率を常に意識して作られていたものの、大幅な予算超過は怪獣、星人の着ぐるみすら作れない事態にまで落ち込む。「盗まれたウルトラ・アイ」「第四惑星の悪夢」は怪獣が出てこない。
ウルトラマンシリーズで怪獣が出てこないなんて知らない人にとっては??な話。でもセブンにはそういう話が確かにありました。
元々地球は違う種族の生命が住んでいたのに人間が侵略して今の地球の住人になった「ノンマルトの使者」も傑作です。
怪獣ものなのに怪獣が出ない。本来あってはならないけど、脚本の妙で傑作が生まれてくるというのも皮肉な話です。
兵器開発競争を「血を吐きながら続ける哀しいマラソン」といった「超兵器R1号」
「地球征服に武器はいらない、お互いの信頼関係を壊せばよい」といったメトロン星人の回。最後のナレーションはこういうもの。「メトロン星人の地球侵略計画はこうして終わったのです。人間同士の信頼感を利用するとは恐るべき宇宙人です。でもご安心下さい、このお話は遠い遠い未来の物語なのです…。え、何故ですって?…我々人類は今、宇宙人に狙われるほど、お互いを信頼してはいませんから…」第8話「狙われた街」
こんな事を子ども向け30分番組で言っちゃうんですから、やっぱり傑作です。
時代は、怪獣から妖怪、スポ根ものにかわっていくところだったのも視聴率が苦戦した要因。
実際に撮影されなかった脚本(ストーリー)についても触れられており、ウルトラセブン企画から最終回まで、しかも後半は並行して制作された1時間もののSFドラマ「マイティジャック」やセブン後番組の「怪奇大作戦」の制作がスタートしていたり、決して円谷プロとして全期間を通して最傾注できた作品ではなかった。それでも、後年のウルトラセブンはウルトラシリーズの中でも屈指の傑作と呼ばれるのは、全49話のドラマそれぞれが明確なテーマを持ってわかりやすく作られたからだと思います。
前述の各回は、特に印象深く、子供ながらに「なんかすごいこと言ってる…」と思ってました。
ウルトラセブン好きは必読の書です。
なお12話「遊星より愛をこめて」については一切触れていません。解禁はまだ遠そうですね。

- 作者:白石 雅彦
- 発売日: 2017/12/20
- メディア: 単行本(ソフトカバー)