「９９のなみだ 旅」

リンダブックス編集部編

　次々と起きた台風で無人の実家が心配で三連休初日の今日、まずは実家に様子を見に行く。前回、1階の雨戸とシャッターを閉めておいたおかげで特に問題なし。雨漏りもしていずまずは一安心。庭に播いておいた除草剤も効いているようで雑草も繁茂していなかった。離れたところに家があるというのは色々と悩みの種です。金目のものは殆どなく、後は一気に片付けが出来るくらいなので、時間を見つけて空にしようと思います。

　さて、電車で片道2時間、ゆっくりと本が読めました。
　今回の「99のなみだ」は、”旅”をテーマにした１２編。

「エンディングノート」
小学3年生の母沙希は、1年前、余命宣告を受ける。週末医療を病院で受けず隊員をすることを選び、残された1年でやりたいことをエンディングノートに綴る。娘に伝えるお料理のレシピ、家族との旅行。そして旧友との旅行先の出雲で心境の変化を迎える。
「父の骨」ニートの息子と父親の旅行先は沖縄。戦争で亡くなった祖父の遺骨引き取り。脱走兵だった父親を反面教師として生きてきた半生だったが、沖縄で父の最期を聞いた時、すべての疑問が解決する。
「恐るべき妹、帰阪」
　自由奔放に生きる妹とそのお世話をし続ける姉の私。一人暮らしを突然やめて実家に帰ってきた理由は？
「月の輝く夜に」
　お客さんの誘いで沖縄旅行にホステス4人。離岸流に巻き込まれて沖に流されてしまう。月夜の海、発泡スチロールに掴まりながらもし何かあった時、それぞれ伝えたい事をみんなで言い合うことに。
「送別のことばを」
突然母が亡くなってから父子家庭となった姉と弟。姉はいつもへらへらとしていてしっかり者の弟が支えている。その姉が遠いところに嫁に行く。新幹線で見送る弟が気付いた姉の本当の姿とは。
「二日間のグレートジャーニー」
聴覚障害者の息子が、父が単身赴任する札幌まで一人旅をするという。やきもきする母親は、息子の成長を感じる。
「母の日に」
6歳の時に母を亡くした芽衣の家に後妻に来たのは幼稚園の麻紀ちゃん先生だった。寄り添いつつも母と認められない芽衣は大学入学と同時に上京し別居することに。離れてわかる芽衣への愛情。そして母の日に…。
「それぞれの道」
書道教室を営むお婆ちゃんは凛としている。おじいちゃんが入院した頃からお婆ちゃんは人知れずどこかに行っている様子。どうやら自動車免許を取りに行っていたよう。「各奔前程」を旨とする夫婦の絆とは。。
「今年のレタス」
今年もレタスが6個、箱に入って一人暮らしの暁子の元に送られてきた。亜紀子は美大を卒業して高校で美術教師をしており近所に住む1年先輩の涼輔と半同棲のような生活をしている。涼輔が有名な賞を受賞したそのパーティの夜…。
「旅立ち」
高速バスから降りた遥人は目の前で妊婦が苦しんでいる場面に遭遇する。救急車を呼び病院まで付き添った遥人は、その妊婦と姉の住む牧場を手伝うことに…。
「夢の理由」
優斗は強豪校で野球をする為に寮生活をしている。野球好きは父親譲り。その父が病に倒れる。
「パーク・トリップ」
4歳になった息子の祥太郎は乱暴者で、近所の公園でもトラブル続き。結局近くの公園では迷惑がかかる為、母はいくつものの公園を渡り歩く。ある公園で女の子に乱暴を振るってしまった祥太郎を止める為近寄ろうとした時、その女の子の母親に制止される。もう少し様子を見ましょう、と。

　
「99のなみだ」は、自分の心情に近いお話しの場合、すぐに感情移入できますが、そうでない時は「そんなもんか…」と冷静になってしまいます。
今回のお話しは、さほど生活的には近い登場人物でもシチュエーションでもなかったんですが、結構のめり込むことが出来て、電車の中で鼻の奥がつーんとする感じ、もう少しすると涙が流れてしまう寸前でした。

人生１００人様。つらいこともたくさんあります。そんな中でも自分の心持ちひとつで明るく前向きになることができる。そんな気付きをほんの一瞬を切り取った掌編の「９９のなみだ」は教えてくれます。
なんかつらいな、大変だなと思った時に手に取るとこの中に何らかの指針がある。
「９９のなみだ」、何冊出てるかよくわかりませんが、また機会があれば読みます。詰んであるのはあと1冊ｗ

99のなみだ・旅―涙がこころを癒す短篇小説集 (リンダブックス)

にほんブログ村