先日映画を観たので、つい読んでみたくなり35年以上ぶりに再読。探せばあるんだけど、探すの大変なのと、表紙が異なった〔新版〕が出ていたので衝動買いしちゃいました。
発表は1956年ですから、今から65年前にもなります。
『夏への扉』とは、冒頭、猫のピートが冬、雪が降ると、飼い主のダンに家にある11の扉をひとつずつ開けてまわるようにせがむ。どこかの扉が夏への扉となっているのを確かめるように。
家事用ロボットを開発するダンは、親友のダニエルに自身の発明したロボットを販売する会社を任せ順調に会社の業績を伸ばしていた。ある日ダンの婚約者で社長秘書でもあるベルに会社に来るよう促され、3人の株主総会が始まり、その場でダンの解任、解雇が告げられる。ちゃんとしたものを開発し販売したいダンと一刻も早く市場投入をしたいダニエルとの確執をベルが焚きつけた形。
信頼していた親友、婚約者に裏切られたダンは、失意のまま”コールドスリープ”の契約をする。しかし、どうしても我慢ならないダンは、一矢報いるべくダニエルとベルのもとに行くが返り討ちに逢い、契約したところと別の会社のコールドスリープに入れられてしまう。その期間は30年。。
西暦2000年。1970年から30年後にダンは目覚める。一緒にコールドスリープする予定だった愛猫のピートと別れ、慕ってくれていた小さい女の子リッキーとももう会えない。その上、コールドスリープ前に信託していた会社の株券は会社が倒産しており、無一文に。
ある日、軍事機密のタイムマシンの開発の話を耳にしたダンは、それを使って過去に戻り、ピートとリッキーを取り戻す時間遡行をする決意をする。
信頼していた人々の裏切りによってすべてを失ったダンが、未来に行ってからが俄然面白くなります。猫のピートは最初から最後まで猫らしく、ダンが主人公ではあるけれど、ある意味、人間に媚を売らず常に気ままに動き回るピートの物語と言っても過言ではない。「猫小説」と言われる所以です。
巻頭、ハインラインから読者に献辞がかかれています。
「A・P、
フィリス
ミックとアネットほか
世のすべての猫好きに
この本を捧げる」
初めて読んだ時、舞台となった1970年は過去で、2000-2001年は未来でした。
しかし、その未来も今となっては20年前の過去。
全自動のロボット掃除機は、”ルンバ”があって、自動製図機はCADが実用化されている。
コールドスリープやタイムマシンも実用化するんだろうか。
もしくは、実はもう実用化されていたりして。
もともと時間SF好きなんですよね。「バック・トゥ・ザ・フューチャー」とか「ある日どこかで」とか。小説では広瀬正の「マイナス・ゼロ」とかも面白かった。広末涼子主演の「バブルへGO!!タイムマシンはドラム式」も面白かった。
時間SFの古典的名作なので、好き嫌いは分かれると思いますが、基礎知識、一般教養としては読んでおいた方がいい作品です。
あ、最近公開された映画版も、舞台を日本に、時代も現代に、うまく翻案されていました。