「ハゲタカⅡ(バイアウト)」と「レッドゾーン」の間のお話。投資ファンド鷲津を主人公とする「ハゲタカ」本編と異なり、本編に登場した日光ミカドホテルの松平貴子を主役に据えたスピンオフ。
「ハゲタカⅡ(バイアウト)」で海外のホテルグループ、リゾルテ・ドゥ・ビーナスに買収されたミカドホテルを取り戻そうとする創業者一族の娘・貴子。
企業買収を本筋とする本編とは異なり、ミカドホテルのオーナー企業、暗躍する中国、香港の大富豪・将陽明とその娘・美麗、将の孫でありながら風見鶏のように自分の利益のみを考え行動する賀一華が三つ巴、四つ巴の国際スパイ小説になっています。
読んでて一番に思うのは、金と権力が支配する中国の怖さなんですが、将とミカドホテルの先々代、貴子の祖母・華との心からの友情を見ると、体制さえ異なれば中国と手を取り合って行くこともできるんじゃないか、ということ。
ただ、共産党一党独裁の体制はなかなか揺るがない。悲しい現実です。
ジェットコースターのように話が転がっていき、血を流しながらではあるけれど、落ち着くところに落ち着くという予定調和なお話です。
ドラマ版しか観ていないと、そもそもミカドホテルの話はテレ朝版の「ハゲタカ」にしか出てきませんので、小説版本編を読んでいる人にはおすすめです。