池井戸潤著・文春文庫
銀行ものに連続爆破事件が絡む、いつもの池井戸ものと異なりちょっと毛色の変わった作品。
業績悪化の続く大型スーパー”一風堂”は、融資元の白水銀行にとって悩みの種。さらに500億の追加融資にあたり、慎重に進めたい審査部の坂東と融資に前向きな銀行経営の中枢である企画部の二戸が激しくやり合う。
そんな折、一風堂に爆破予告があり予告通りに店舗で爆発事件が起きる。容疑者として浮かび上がったのは、一風堂の安売りグループ店舗出店を反対していた地元商店で、出店騒動の中、融資を断られて自殺した男の長男。爆破事件の真犯人探しと、巨額な融資が行われるか否かが並行して進む。
金と権力に魅せられた男たちのなんとも醜いことか。池井戸作品がこれほどまでに愛されているこの時代は、裏を返せばそういう人が勝ち組であることが続いている証拠だったりする。疑わしいこと、黒に近いグレーがまかり通っているのは、政治を見ても明らか。誰も半沢直樹や坂東のような正論で成功している人はおらず、正義は常に負け組。池井戸を嬉々として読んでいる人は、自分も含め、世の中正直者がバカを見ていることがわかっていながら、既に諦めの境地にあり、せめてフィクションの世界だけでも快哉をあげるしかない。それでもそんな自分の生き方に後悔はないけどね。もうね、悪いことやって私服を肥やしている人は地獄に落ちてしまえばよい。
あ、感想になってないや。