土居 伸彰著・集英社新書
新海誠作品に最初に知ったのはひとりで作ったと話題になった「ほしのこえ」でした。
実際に見たのは「秒速5センチメートル」でファンになってから。その後追いかけるように過去作を観、「秒速ー」以降はリアルタイムで。
個人的に好きなのは「秒速ー」と「言の葉の庭」
そしてその後東宝系でロードショー公開される事になった「君の名は。」の話を聞いた時、こんなに個人的な物語を作る人が大きなバジェットの映画作って大丈夫?と不安になりました。それは全くの杞憂。蓋を開ければ250億の大ヒット。続く「天気の子」も150億を越えて名実共に日本を代表するアニメ監督になってしまいました。
初期から知ってる新海監督の大出世を嬉しいと思う反面、手の届かないところに行ってしまったなーとちょっと寂しい気持ちも。
ただ新作の「すずめの戸締まり」も含め、やっぱり新海監督の良いところは全く残っており、それはキャラクターの魅力よりも風景や背景を中心に据える画面の作り方だと私も思っていました。
キャラクターの魅力は物語の中で大切ですが、なんでもない日常風景を美しく切り取るのって、できそうで出来ない。
そういえば、最近の作品は、背景に意味をもたせ現実の風景を取り入れるようになっていますが、これまで好きになった新海監督以外の作品、例えば「銀河鉄道999」も椋尾篁の背景美術がすごく好きでした。
この本の著者、土居さんは、海外のアニメーション作家の紹介する活動をされていて、その文脈で新海誠を解題していく。この視点は正しい。
個人作家から分業作家へ変化した新海監督ですが、その作品の本質は「ほしのこえ」の頃と何も変わっていないと私は思っています。ただ全くの個人的な想いをストレートに表現した過去作から「君の名は。」以降は、他人の意見もちゃんと聞くことでメジャーに相応しい作品になってきてるなと思います。
「すずめの戸締まり」もう一度観に行きたいな。来場恩典が変わったら行こうかな。
新海監督について深堀してみたいなと思った方にはタイムリーでオススメです。