梁石日(ヤン・ソギル)は、在日朝鮮人の作家さん。1993年にデビュー作「狂躁曲」(単行本化タイトル「タクシー狂躁曲」)が「月はどっちに出ている」のタイトルで崔 洋一監督により映画化されました。「月は―」もおもしろかったんですけど、ビートたけし主演の「血と骨」の圧倒的な描写に度肝を抜かれ、以降梁石日作品を結構読んでいます。
基本自伝的な小説を中心に描かれており、「狂躁曲」は自分のタクシー運転手時代の話、「血と骨」は自分の父親のことを描いたものだし、その他の作品も在日朝鮮人の世界を描いたものが多い。今回の「裏と表」は、登場人物たちが通名を使っているかもしれないけど、すべて日本人名で描かれている梁作品では珍しい小説。
主人公は、金券ショップを新規開店した男、樋口。そこに群がる老若男女。少量の商品券を持ち込む人、大量に映画チケットを持ち込む人、支給された入浴券を持ち込み、金に変える浮浪者…。様々な金券と金のやりとり。
そんな中、大量の高速券を持ち込む美女。ある日その美女と再会し、更に大きな"裏"の仕事が舞い込むが…って感じの話。
金券ショップは、新宿にたくさんあるのでたまに利用します。大体は映画のチケットを買う位。出張の時のチケットを買って、少し浮かせるっていう使い方もあるんでしょうが、面倒なんでやったことないなぁ。どうせ会社から出るお金だし、人によっては"生活の知恵"とか言う人もいますが、数百円でも横領的なことはしたくないし。
映画のチケットは、恐らく出資会社に割り当てられたものが流れてくるんでしょう。金券ショップに流れなければただの紙屑。これね、本当にもったいないと思うし、制作側の立場に立って見れば、やっぱり、たくさんの人に観てもらいたいと思うんですよね。勿論、正規料金を払うっていうのもありですが、紙くずになる位なら金券ショップに流して、観たい人に使ってもらうのは決して悪くはないと思う。あ、でも、既に出資されたものだろうから、新たな収入にはならないんだ…。うーん、難しいです。
さて、物語は、どんどん裏の世界に進んでいく。こういう裏世界の話、結構好きです。新堂冬樹とか、金融や芸能関係の裏社会の話をよく書いていて、これも結構読んでいます。
自分の知らない世界がこの世の中にはまだたくさんあるんだろうなぁと思いを馳せ、こういうヒリヒリした生活も刺激が合ってよいなぁと少し憧れたりするけど、でもま、少ない給料で、毎日一喜一憂している生活が自分の身の丈にはあってるなと、小市民的に思ってしまいます。
社会に表と裏があるように、人間にだって表と裏があります。自分は、表裏ない方だと思います。アニソン唄いであることも会社でカミングアウトしてるし(爆)。しかし、表裏ないよといいつつ、やっぱ人には言えない事を少しは抱えていたりする。人間なんてそんなものですが、基本、表裏ない方がいろんな意味で楽ですねぇ。
400頁強ですがあっという間に読了。ちょっとえぐい描写もありますが、大丈夫な人はお勧めです。
梁石日、私的には作家買い(※中身を気にしないで、作家名だけで購入する)OKな作家さんです。

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