1977年 日活 小沼勝監督。
DVDでは、”火星の女”というタイトルがついています。夢野久作の原作『少女地獄』は、「なんでも無い」「殺人リレー」そして「火星の女」の3編からなるオムニバス短編で、その中の「火星の女」だけを映画化したもの。映画化名の「夢野久作の少女地獄」では、この3篇を映画化したように思われるので、DVD化の際に短編名「火星の女」をメインタイトルにしたのは正解。私もビデオ化された時に一度観ていますが、『少女地獄』で一番気に入ってたのが「なんでも無い」だったのでその映画化かと思ったクチ。
にっかつロマンポルノなので、ヌードシーンはありますが、これもまた、さほどそそられるものではありません。にっかつロマンポルノというと、AVのようなものと勘違いしている人も多いですが、元々映画産業が斜陽の時期に、会社存続の苦肉の策として、ヌードを織り込んだ映画を作ることで延命を図ったものなので、スタッフは往年の映画人や映画が撮りたくて日活に入った映画青年が多い。この頃の日活は、ヌードさえ入っていれば会社は内容にとやかく言う事が無かった為、監督の作家性を存分に画面に出す事が出来た。これはある意味では、大変有意義な時代だったに違いない。確かに低予算ではあるものの、映画に欠ける情熱と優秀なスタッフによって作られた映画は、今改めてみると映画作品としてしっかりと成立しているものが多い。
さてこの映画。聖人君子のとして巷間で評価の高い名門女学校の校長が、裏では生徒に手を出し、業者と裏取引をして公金を横領するわ、その金で芸者遊びをするような悪い奴。昔、女生徒が校長の魔の手にかかり、更に妊娠しているのを知りながら、校長は殿宮公爵夫人として嫁がせた。その後生まれた娘・殿宮アイ子が後年この女学校に入り、「火星さん」とあだ名されるスポーツ万能の少女・甘川歌枝と友達になる。好色校長は、歌枝に手をつけまたも妊娠させる。そして少女たちは、不潔で不誠実な大人たちに復讐をする、と言った話。
元々の「少女地獄」の中では、確かに映像化しやすい話かも知れないけど、どちらかというと、虚言癖の女、天才看護婦・姫草ユリ子が主人公の「なんでも無い」の方が私は好きなので、こちらの映像化を望みたい。
「少女地獄」は、角川文庫が今でも店頭で手に入りますが、青空文庫でも読めます。映画よりも原作、特に「なんでも無い」お勧めです。読んだ事のない人、是非。戦前(昭和11年)の小説ですから読みにくいかもしれないけど。↓
http://www.aozora.gr.jp/cards/000096/files/935_23282.html
この映画は、原作を読まないと意味が判らんところもそこかしこにあり、全くつまらない話。原作が原作なんで、とにかく暗い。これ、当時、裸期待で観に行った客はこんなもの魅せられて、どよ〜んとした気持ちになったに違いない。しかもどう見ても少女には見えない女学生ばかりというのは、この時代の映画にありがちだけど、さすがに黒いストッキングをはいたまま校庭で体操するのは妙だww
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