日々雑感っ(気概だけ…)on Hatena Blog

思ったこと、思っていること。読んだ本、観た映画、TV。聴いた音楽…。会社でのこと、家族のこと、自分のこと。日々のうつろいを定着させています。はてなダイアリー開始は2003年、2006年4月から毎日更新継続中。2017年6月8日「はてなblog」アカウント取得、2019年1月「はてなダイアリー」から正式移行しました。アクセスカウンター2019年01月26日まではpv(2310365)です。

「カオス」を読む


梁石日著・幻冬舎文庫

梁石日は結構映画化されていてデビュー作「タクシー狂躁曲」の映画化「月はどっちにでている」('93)や自分の父親をモデルに戦中戦後のギラギラした情景を活写した名作「血と骨」('04)は大ヒットしました。
在日2世の梁石日は、その出自に関わる私小説や、自分の経験に基づく作品を多く書いています。

 新宿・歌舞伎町を根城に闇の世界に顔が利く在日朝鮮人、ガクとテツ、それとタマゴという名のテツの彼女(ニューハーフ)が、主人公。ガクとテツが中国から密輸された漢方薬を捌く手伝いをして欲しい、と知り合いの台湾人から依頼された事から、麻薬絡みの事件に巻き込まれる事になる。ガクとテツは、ヤクザやマフィアではない、いわば独立系。頼るすべなく2人でなんでも乗り切ってきた。
 ある日歌舞伎町の有名中華料理店を破格の値段で手に入れた2人。ガクは、中華料理店を共同出資する条件として、いれあげたジャズシンガー沙織を自分のものにする為、タマゴをママに大久保でクラブを開く。タマゴはテツにぞっこんでテツの子供が産みたいという一念から、あらゆる宗教施設に立ち入り祈りを繰り返す。その甲斐あって妊娠の兆候が。

 外見は粗暴な主人公たちの周りの裏社会を切り取っただけのような感じですが、これもまた無器用な男と女の愛の物語でした。いじらしいのは、ニューハーフのタマゴ。私的には、ニューハーフって生理的に×なんですけど、元々男性が、女性になるという事の努力は並大抵のことでない事は想像に難くない。まして好きな男がいたのならその思いは強烈だ。しかし、外見はお金をかければ”女”になれるけどさすがに子供を授かる事はできない。いくら女よりも女らしく、女よりもきれいな女に見えても、自分は男である事を認識せざるを得ない哀しさ。
 好きで好きでたまらない女性の為なら何をしても惜しくはないというガクもまた純情な男。女には同棲をしている男がいるけど、それでも構わず猛烈にアタックする。
 テツは、タマゴがいながら、紀香という別の女とも長く付き合っている。要は今旬な二股。女はお互いにテツを自分のものにしたいと思っていて、「どっちが好きか」とテツに詰め寄るが、「両方とも好き」と嘯く。こういう気持ち判るなぁ。みんな好きなんですよ。

 梁石日の中で一番というわけにはまいりませんが、新宿歌舞伎町の街並みが分かる人には、情景が思い浮かんで良いかもしれません。