篠田節子・文春文庫
久々に篠田節子を読む。ずいぶん前に買って有ったんですけど「秋の花火」ってタイトルだから、やっぱ秋に読まないと…と思ってたら、5回ぐらい秋を越してやっと読みました…(^-^;)。
5つの、中年の男女を主人公とした物語を集めた短編集です。
「観覧車」は、恐らく舞台のモデルは「よみうりランド」。年末の寂しい遊園地で出逢った男と女の話。
「ソリスト」は、我儘なロシアの天才ピアニストとの友情と彼女の闇に迫る話。
「灯油の尽きる時」は、介護に疲れた女と、偶然出逢った男女の話。
「戦争の鴨たち」は、アフガニスタンに入国してルポを書くことで一旗揚げようとしている作家とカメラマンの話。
そして表題作の「秋の花火」は、天才指揮者とその教え子たちの話。
全て中年の男女の話ですので、若い方には判らないかもしれません。30代以上の女性がメインターゲットのお話ですね。
それは「秋の花火」のこんな一節からも感じます。
「子供たちが湖畔を駆け回り、大人たちがアイスボックスから肉を取り出したり、火をおこしたりということに追われていたあの夏は、思えば私たちの人生の夏でもあった。(中略)いつのまにか人生の夏は駆け抜けていき、ふと秋の気配に気がついたとき、先生が倒れた。いや、先生が倒れたことで、私たちは近づいてくる木枯らしの季節を意識したのかもしれない。」
読んでいてハッとしてしまいました。
そうなんですよね。カラオケとかで若い人たちと触れ合う機会が多いから、つい自分もみんなと同じように夏の空気の中にいるつもりでいるけど、もう自分は秋の季節に突入しているんですよね…。歳相応に落ち着かないとね。
篠田節子作品は、デビュー作の「絹の変容」から殆ど読んでます。「女たちのジハード」で直木賞を受賞していますが、長編も短編も本当に面白い小説ばかりで外れがありません。作者の趣味がチェロということもあり、音楽を主題にしたお話(「カノン」「ハルモニア」など)も有ります。この「秋の花火」でも「ソリスト」「秋の花火」は、音楽に絡めた話でした。
特に30代以上の人生に疲れを感じ始めたり、ふと立ち止まったと感じた人にお勧めです。
- 作者: 篠田節子
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2007/11
- メディア: 文庫
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