確信犯による犯罪ほど厄介な犯罪はない。善悪の判断、法の判断ではなく、信念に基づいた犯罪は、まずそれが間違いであることを相手に判らせないといけない。
あ、そもそも「確信犯」という言葉、意外と間違えて使っている人が多い。確信犯とは、「政治的・思想的・宗教的等の信念に基づいて正しいと信じてなされる犯罪行為,又はその行為を行う人のこと」です。岩波国語辞典では、「1990年ごろから,悪いとは知りつつ(気軽く)ついしてしまう行為の意に使うのは、全くの誤用。」とまであります。
つまり、「悪いということを知っていて(確信して)やっちゃう」ってことではなく、自分のやってる事は正しい事と「確信」してやること」ってことです。
「家族狩り」はまさに確信犯の犯罪でした。ただ犯行動機が信念に基づいているだけ、そこにはある種の説得力があり、なおかつ登場するすべての人、家族が何らかの問題を抱えていて、現法や倫理的な善悪は別とすると問題解決の一つの方法であるといえてしまう事も、自分が読んでいて割り切れない部分だったりする。
ただ。ミステリー小説を読んで、家族について考えさせられると思っていなかったので収穫ではありました。
あとがきで「小説を読む上で、登場人物の感情と共に生きる時間があれば、それはもう経験と言えるものだろうと思います」と書いていますが、本当にその通りだと思います。私が、ノウハウ本や自己啓発本が好きでなく、専ら物語を読んでいるのは、そこから得るものの方がノウハウ本を通じて得るものより大きく心の残るからです。それは、登場人物似感情移入することで、そのこころの動きをトレースすることにより疑似体験をしているからにほかなりません。現実に人殺しをするわけにいきませんからね。
文庫本で全五巻と長編ですが、もし機会があれば手にとってみて読むことをお勧めします。
特に家族のことで悩んでいたり、自分はどう生きるかを悩んでいたりする時に何らかの示唆が得られるかもしれません。
- 作者: 天童荒太
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2004/05/28
- メディア: 文庫
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