絲山秋子著・角川文庫
5つの短編小説集。表題作「ニート」とその続編「2+1」が関連あり。
5つとも"ダメ男"の話。いままで絲山作品結構読んでいますが、そういえばダメ男ばかり出てくる。三高(高身長、高収入、高学歴)という見た目の問題ではさほど駄目ではないのでしょうが、そろいもそろって生活破綻者ばかり。ただ母性本能をくすぐるのか、決して嫌な感じはしない。
「ニート」は会社を辞め引き篭もりを続ける男。更に「2+1」では、せっかく主人公の女性に助けられたのに、1年後また生活に行き詰まり、主人公の女性作家は自分がシェアしている東京まで呼び寄せ面倒を見る。「ベルエポック」は突然婚約者に死なれた女性とその引っ越しを手伝う主人公の話ですが、なにしろ婚約者の男が死んでしまってるんだから究極のダメ男でしょう。
「へたれ」は遠距離恋愛をしているホテルマンの話ですが、彼女のもとに向かう途中に自分を育ててくれた叔母の住む名古屋にふらりと降りてしまう。最後の「愛なんていらねー」の男は、フランスに留学した優秀な男だったのに、久しぶりに会ってみれば、刑務所帰りのスカトロ男になっていたりする。
と、今回読んでいてふと思ったのは、私が絲山作品が好きなのは、おそらく自分がこのダメ男の範疇に間違いなく入るからだということ。
そりゃ、定職にもついているし、家庭も持っているけど、絲山作品に出てくる男をどうしても他人に思えず(スカトロの趣味はないけど)、一歩間違えば絲山キャラになっていたかもしれず、否、今の自分にもそういう要素があるということ。
絲山作品のダメ人間に優しい女性は理想です。
- 作者: 絲山秋子
- 出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング
- 発売日: 2008/06/25
- メディア: 文庫
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