半村良・河出文庫。
半村良は殆ど読んでいます。これも角川文庫で読んでいる、はず。だけどさすがに忘れてるなぁ。
年末ジャンボ宝くじで1000万円を当てた主人公、岩井栄介は市井の真面目な安サラリーマン。宝くじは"夢"を買っていただけだけど、それが現実になったところの描写が小市民ぽくて非常に良い。
ところが、その後会社の友人とバーに行ったところから不思議な世界が始まる。奇妙な人物に出逢い、古代の神々の世界での戦いに巻き込まれていく。
半村良の物語は、普通に暮らしていたサラリーマンが、あるきっかけで巨大な裏の世界の仕組みに取り込まれていく、というものが多い。
既に亡くなって15年経ち、ほとんどの著作が書店い並ぶことが亡くなっていますが、kindleではまだ多くの作品が読めますので、ぜひ読んでほしいと思います。
一番好きなのは戦国時代から昭和までの勅忍の歴史を描いた「産霊山秘録」。嘘つきを生業とした嘘部一族の物語「闇の中の系図」「―黄金」「―哄笑」の嘘部3部作、突然Mについた超能力のせいで国から追われる「岬一郎の抵抗」、本来100巻構想で描き始めたけど、未完に終わったムー大陸のお話「太陽の世界」、恐らく日本SFベスト10に入る大河SF「妖星伝」そしていまだに映画、漫画で再生産される「戦国自衛隊」。
作家が亡くなると、追悼フェアで在庫一掃すると作品は本屋さんから消えます。毎日たくさんの新刊を並べないといけない本屋さん的に旧作を並べるスペースはありません。出版社にしても、旧作よりも新作を並べた方が、その後の売上に繋がる未知なる可能性があります。
旧作については、作者が亡くなっているから、その後の校正も出来ません。そういう意味では、最近刊行された新井素子の「星を行く船」5部作完璧版のように、初出時のガジェットの古さを普遍的なものに変え、デビュー当時の間違いなどを修正して正しい文章に校正するというのは物語二永遠性を与えるためにはよい作業です。
確かに古いい言い回し、時代背景などがありますが、それを念頭に置きつつ読むだけの価値は 半村良にはあります。
こうして旧作であっても忘れた頃に別の出版社から再刊されるというのもそんな理由があるからだと思います。
- 作者: 半村良
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2007/08/01
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログ (1件) を見る