高千穂遥著・ハヤカワ文庫 JA
2年ぶりのクラッシャージョウシリーズ新刊。今回は別巻(外伝)なので、ジョウチームではなく連合宇宙軍のコワルスキーが主人公。
「銀河系最後の秘宝」(本編3巻)のラストで、重巡洋艦<コルドバ>とともにブラックホールに吸い込まれそのまま死んだと思われていたコワルスキー大佐は、飲み込まれる寸前に座標指示をしないワープで飛び、生き延びていた。コルドバは航行不能となり、乗組員とともに近くの惑星に降下したものの、そこは文明の一切を否定する入植者がいる惑星で、コルドバのメンバーは武装解除され囚われの身となる。
そこへ宇宙海賊のジェントル・リリーのチームがコルドバ同様に惑星に不時着してきて、惑星を制圧しようと動き出す。コワルスキーは、海賊のトラブルを作った原因である見習いクラッシャーのタクマと共に海賊に対峙する。
ここのところこのシリーズはいまいち乗れなかったのですが、今回は面白かった。コワルスキーの死は残念だっただけに、生き残っているというドラマはやっぱり読みたかった。しかもちゃんとクラッシャー(見習いだけど)を絡ませ、最後3ページに「えっ!そーだったの!そーか―そーだよなぁ」という仕掛けが…。これは、本編を読んでいる人は勿論、最近TVでもやりましたがアニメ版しか見ていない人も読むといいと思います。
クラッシャージョウは、こころに何かを残すとか、深く考えさせられるといった類のお話ではありません。冒険活劇に徹していて「ワクワクドキドキ、面白かったー」って感じです。こういう何も考えないで物語に身を委ねられるお話も楽でよい。
作者も70歳を越えてこんなワクワクする物語が書けるというのはそれだけで驚異なのですが、クラッシャージョウシリーズは終わりのない物語なので、ペリーローダンのように複数の作家に委ねるというのはありかもしれません。