脚本家の山田太一さんが亡くなられた。
同じ川崎市民だと初めて知りました。
先週「ふぞろいの林檎たちV/男たちの旅路〈オートバイ〉: 山田太一未発表シナリオ集」を読んだばかりだったので、特に衝撃でした。
山田太一という脚本家を意識したのは、NHK「男たちの旅路」(1976)から。その後、TBS「高原へいらっしゃい」(1976)、「岸辺のアルバム」(1977)、NHK大河ドラマ「獅子の時代」、TBS「想い出づくり。」ときてTBS「ふぞろいの林檎たち」(1983・85・91・97)となる。
その他2時間単発ドラマを数多く書かれています。
映画は意外に少なく11本。私が観たのは「キネマの天地」(1986)、「異人たちとの夏」(1988)「少年時代」(1990)くらい。
山田脚本の特徴は、それまでの美男美女を主人公に据えたドラマではなく、悩みを抱えているどこにでもいる市井の人、人に言えない悩みを抱えている人々をとりあげていました。
池井戸潤原作ものも好きなんですけど、あくまでもあれは勧善懲悪、往年の時代劇の現代版のようなもの。あれはあれで楽しく、毎回ドキドキして観ますが最後は安定の”正義が勝つ”的な感じ。安全なジェットコースターみたいな感じ。
一方の山田太一ドラマは、問題が完全に解決することはない。最後も爽快に迎えるわけでもない。でもシリーズ中もラストも何かしら考えさせられる”種”を視聴者に残すことが多かった。
山田太一ドラマが隆盛した70年代後半から90年代前半は、高度経済成長、バブルという経済最優先猪突猛進していた頃。その中で”おきざり”にしているものがあるんじゃないか?という投げかけが常にあった。
今は、自分のことで精いっぱい。他人の悩みにかまけている余裕はないので、山田太一ドラマが視聴率を稼ぐことは難しくなっていると思います。
ただ、山田太一ドラマは、人として生きるのに大切なものを教えてくれます。
一番好きなドラマは「男たちの旅路」ですが、その第4部3話「車輪の一歩」。
車椅子の青年たちと吉岡司令補(鶴田浩二)のやり取りが考えさせられます。
(あらすじは以前blogにかいています)
リンク↓
hee.hatenablog.com
最近BSで再放送されましたが、準主役で清水健太郎が出ている為か、第4部は放送されませんでした。残念。
「ふぞろいの林檎たち」もパート3、パート4はソフト化されておらず、完全版の発売が望まれます。
享年89。
ご冥福をお祈りいたします。