昨年末の訃報を受けて読みました。脚本家の山田太一さんが自作について書かれたエッセイをまとめたものです。
山田太一脚本を意識するようになったのは「男たちの旅路」でした。全4部各3話ずつ計12話とスペシャル版として1982年2月に1本、全13話の物語です。
第1部は1976年2月なので小学5年、第2部は1977年2月だから小6、第3部は同年11月、第4部は1979年11月なので中学2年、SP(戦場は遥かになりて)は1982年2月なので高校3年生でした。
振り返ってみると、第二次怪獣ブーム1971年(小学1年生)から1974年(小学4年)はドンピシャの世代なんですが、よく観ていたのは1971-72くらいで、その頃からTVドラマ、特に日本テレビのドラマをよく見るようになっていました。
NTVの石立鉄男主演のコメディホームドラマや「青春」シリーズ、「おれは男だ!」「怒れ!男だ」「俺たちの旅」「俺たちの朝」「ゆうひが丘の総理大臣」あと1974年4月からの「太陽にほえろ!」とか。「傷だらけの天使」「探偵物語」は4時台の再放送で。
山田太一ドラマはNHKかTBSが多く、今ほど情報が少なかった時代なので追いかけることはできず気が付いて気になったドラマの脚本が山田太一であることが多かったということで、「男たちの旅路」はNHK土曜ドラマという枠で冒頭”山田太一ドラマ”と出てくるので「なるほど山田太一という人が脚本書いているのか」と思いました。
以降「高原へいらっしゃい」(TBS)「獅子の時代」(NHK大河ドラマ唯一の山田作品)「想い出づくり。」「岸辺のアルバム」そして「ふぞろいの林檎たち」等々TBSの山田太一脚本ドラマはキャストや演出ではなく山田太一の名前で観ました。
山田さんの視点は、常に弱い者や幸せそうな人の裏側など当時少なかった人の内面に迫る作品が多く、一般庶民の家だよなぁということを小さいながら自覚していたので、特に山田太一脚本のドラマは”親代わり”に人生を教えてくれるものでした。
このエッセイは山田太一さんがこれまで生み出してきた作品のテーマ、裏話が網羅されています。
昔は、TVドラマをソフト化して売るなどということは考えられていなかったので、今見ることができる作品は大変少なく再放送を待たなければなりません。その上、ビデオ撮影の作品は既に上書きされてこの世にないものも多い。でも山田太一さんは有名な脚本家なので脚本集などはかなり出ています。
少なくとも上に挙げた作品はどれもお勧め。TV欄やオンデマンドで見つけたら見てみてください。
にしても、このエッセイを読むと、昔のTVドラマは、山田さんに限らずオリジナル脚本が多く、今みたいに小説、漫画原作というのはないわけではないけど凄く少なかった。今のように原作人気に寄り掛かった安易なドラマ作りはしていなかった。結局既に知られている原作付のドラマ化の企画が通りやすい、予算が集めやすい、キャストやスタッフにも説明しやすい事が事実としてあるんでしょうけど、それでは脚本家は育たないし、山田太一さんだけでなく、倉本聰さん、向田邦子さんなどのように脚本家の名前でドラマを見るような作品は作られなくなる。
今でいえば、三谷幸喜とか、最近個人的に注目しているのは「silent」「いちばんすきな花」の生方美久のように、オリジナル作品のみで勝負する脚本家のドラマが観たいと、ドラマ好きな私は思います。