2012東映。
74-75年の松竹版の方は観ていましたが、昨年公開された最新版は、ちょっと怖くて見ていなかったんです。
腰痛が治らず、結局今日も家に引きこもっていたんで、ようやく観ることができました。
前回の映画が3部作計4時間29分掛けているのに対して、今回は、2時間14分と半分以下の時間で収めるわけなので、前回の映画より更に換骨奪胎が必要になる。だから、まずは、原作通りに話が進まない事や、主要人物であってもオミットされる可能性があることは充分考えられます。
ミュージカル仕立ての演出は、思ったほど悪くない。恋愛ものの映画がないわけではないけど、どれも刹那的な恋愛ばかりで、真正面から「純愛山河」を謳う時代じゃない。まして、今回の時代設定は1972年。原作で描かれた時代よりも2年前を舞台設定にしている。
冒頭の愛と誠の出逢い、運命の"魔のスロープ"での事故のシーンはアニメ―ションにしている。大切なシーンではあるけど、中心を出逢ってからに据える為には、概要として伝える程度の扱いにしていてもまぁ有りです。
今回の映画版は、とにかくキャストがいい。
30過ぎの妻夫木君のガクランも、観る前は気になりましたが、元々童顔で、長髪に顔を隠している事もあり、違和感はない。それよりも、武井咲の愛の可憐な事。愛役は、今までTV版の池上季実子が一番ステキでしたが、これは武井咲に軍配。逆さ吊りにされる"ガムコ"の安藤サクラ(奥田瑛二、安藤和津の娘ね)は、この映画で第37回報知映画賞 助演女優賞、第34回ヨコハマ映画祭 助演女優賞、第86回キネマ旬報ベスト・テン 助演女優賞、第67回毎日映画コンクール 女優助演賞と、主要な映画賞を総なめしている。高原由紀役の大野いとは、原作と印象が違うけど、今回の"悲しい女"という設定としては、とてもいい味を出している。私は嫌いじゃない。
問題は、座王権太役。そもそも高校生とは思えない巨漢で、原作のまま造形するのは難しい。三池監督は48歳の伊原剛志を権太役に配し、老けている事を気にしているという設定とした。
愛の父親は市村正親、母親には、一青窈。これは、ミュージカル仕立てを意識しての配役。一青窈がとても演技が上手いのには驚きでした。
かように今回の愛と誠は、原作を再現しているわけではないけれど、こういう表現の仕方もありだよな、と思わせるものでした。最後は、原作の感動のラストとはシチュエーションが異なっていましたが、これはこれであり。ちょっと感動できたのも、妻夫木くんの演技に負うところが大きい。
原作至上主義ですと認められないかもしれないけど、全然期待していなかっただけに、思った以上に良くできていたと感じました。
武井咲ちゃんの愛を観るだけでも一見の価値ありです。
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