1996年・伊丹十三監督。
「マルサの女」程ではないですが、これも何回か観ています。最近、伊丹映画マイブームで、昨日に引き続き伊丹作品を再見。
近所に「安売り大魔王」という激安スーパーが出来て、すっかり客足を取られてしまっているスーパー「正直屋」。「正直屋」の社長・五郎(津川雅彦)は、「安売り大魔王」を敵情視察中に、幼馴染の華子(宮本信子)に再会。花子の客の視点から見たスーパーマーケットのあり方に期するものがあって、「正直屋」で働いてもらうことに。花子の観た「正直屋」は、その名前とは裏腹にダメダメなスーパーの見本のような店。モチベーションの低い従業員、プライドばかり高い鮮魚部、精肉部の"職人"チーフ。客を客とも思わない、しかもライバル会社に内通する店長。パートの主婦さえも自分の働く店で買い物をしたがらないスーパー。これをひとつひとつ解決していく花子。いくつかの危機を乗り越え、一丸となっていく「正直屋」にお客様の見る目も変わっていく。なんとか「正直屋」を買収してしまいたい「安売り大魔王」の社長(伊藤四朗)は最後の手段として、職人を全て引き抜こうと画策するが…。
これ、1996年の作品で、食品偽装、産地偽装が大きな社会問題になる2001年(雪印の牛肉偽装)の5年も前、2007年、ミートホープの卸肉偽装の11年も前の作品。伊丹監督の先見の明に驚きます。リパック(売れ残った商品を日付かえて再度パックし直す)や、売れ残った商品をお惣菜にするなんて、昔は当然のようにやっていたんでしょうね。今はそんなことをやっていたらお客様はついてきてくれません。
デフレがこう長く続いていると"低価格こそ正義"という経営者が出てきてもそれは誰も止められない。でも、生産者(農業ばかりではなく下請けもメーカーも含めて)も生きていく為には適正価格というものがある。それを企業努力だけでなんとかしろというのは、いささか傲慢な気もする。往々にして川上に行けばいくほど利益をしっかり確保している。特に自分のところで何も作らない商売人は本当にしっかりしている。販売会社とメーカー、2つの経験があるわたしが言うのだから間違いない。ものを作るより、右から左に流すだけ(というと語弊はあるけど)の方が儲かるというのはどうも解せない。そういう理由もあって、メーカーに転職をしたというのも理由だったりします。
更に「スーパーの女」では、CS(顧客満足)についても語られます。今でこそ当たり前の様に語られるCSについて取り上げたエンターティメントってこれが初めてじゃないかな。この映画が会社の研修用に使われるのもよくわかります。
経営者の人は、必見の映画です。
ただ、クライマックスにカーチェイスを持ってきたのは蛇足。この時間を「安売り大魔王」の凋落をもう少し丁寧に描いていたら100点満点。