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「シン・ゴジラ」感想その1 第1作の呪縛からの解放



(物語の中身に触れることもありますのでご注意ください。)
 29日初日を迎えた「シン・ゴジラ」。初動がよく公開4日間で観客動員71万人(興行収入10億円)を越えたそう。日本製だと2004年の「ゴジラ FINALWARS」から12年振り。最新作では2014年の「GODZILLA ゴジラ」(ギャレス版)から2年。和製ゴジラ映画復活は、やっぱり楽しみ。気になって公開4日目に見に行ってしまう程度にはゴジラ映画好きだったりします。
 さてゴジラ好きのお友達たちも同じような思いだったらしく、既に映画館に足を運んだ人も多い。どうしても語りたい人が多い映画でもあるらしく、賛否両論侃々諤々、どちらかといえば賛辞が多い感じです。

 まず一つだけ言えることは、ゴジラ好きな人は勿論、ゴジラなんて見たこともない、子供だましと思っている人にこそ見てほしい作品になっていると思います。ので、まずは劇場に足を運んでその目で確かめてみてください。それと、「レンタルされてからでいいや」って人もまずは劇場に。この映画は劇場で観るべき作品というのはまちがいないです。


 さて感想を書いていきますが、とても1日では書ききれないので、これからおそらく何回かに分けて「シンゴジラ」の感想を書いていくことになろうかと思います。
 第1回目の今日は、「第1作の呪縛からの解放」というお題で行ってみようと思います。


 「ゴジラ」第1作は、昭和29年11月に公開されました。この年の映画は名作が毎月のように公開されています。
4月に黒沢明監督の最高傑作「七人の侍」。「ローマの休日」の日本公開も4月、8月には犬神家の一族の初映画化「犬神家の謎 悪魔は踊る」(金田一耕助片岡千恵蔵)、9月木下恵介監督の「二十四の瞳」(大石先生は高峰秀子)、まだまだたくさん。なんて贅沢な1年!

 そんな年の最後を飾ったのが「ゴジラ」第1作でした。
 それまで、巨大な怪物が暴れまわるような特撮映画というものがそもそもなく、物珍しさもあって映画は大ヒット。文化人では三島由紀夫が大絶賛だったと言われていますが、批評家、識者からの評価は低く「キワモノ映画」「ゲテモノ映画」扱いでした。
 批評はともかく映画は興行ですからヒットすれば第2作が製作されます。というわけで、翌年4月、舞台を大阪に移して今度はもう1体怪獣(アンギラス)を出して、ゴジラと戦わせます。ここで”ゴジラ対〜”のフォーマットが出来上がります。
 それからは色々なライバル怪獣と戦うゴジラですが、フォーマットが決まれば後はマンネリ街道まっしぐら。崇高な理念で誕生したゴジラ映画も子供だまし(というと子供に失礼)映画になり下がり、1975年「メカゴジラの逆襲」で84年まで眠りにつきます。

 その後、84年「ゴジラ」が作られますが、この作品は54年のゴジラ上陸以降のゴジラの歴史はなかったことになっています。そしてその後作られたゴジラ映画はすべて第1作の次の来襲というフォーマットで描かれています。この作り方では原則としてゴジラのキャラクターは第1作を踏襲することになります。また、"ゴジラ"という存在が既知のもので、生き物として解明されてはいないものの恐怖の対象または越えるべき存在、駆逐するべき存在としての共通認識を人類側は持っています。
 ところが今回の「シン・ゴジラ」はこの第1作の東京侵攻もなく、まさに初めての体験。ゴジラの事も"怪獣"とは言わず一貫して"不明巨大生物"といい、対抗策を練られます。
 実はゴジラ映画以外の怪獣映画は、本来であればこの方法がとれるはずだったのですが、ほぼすべて異端の科学者が政府や軍隊にご意見番として登場して、イニシアチブを取って怪獣を撃退するというお話しになっています。それと怪獣映画に何らかかわりのない恋愛を絡ませる。これもまた偉大なる第1作のフォーマットです。


 あまりにも偉大な第1作はすべての怪獣映画に影響を与えています。それは呪縛以外の何物でもなく、第1作以降、特に平成シリーズ以降は、率先して第1作の呪縛に絡めとられることを良しとしています。その結果、毎回袋小路に入り込んで、観客動員数が減少してシリーズ終了になっていきました。


 今回の「シン・ゴジラ」は、まずちゃんと第1作に向き合いつつも、第1作のフォーマットを悉く無視した作劇になっていることが新しさですが、一方で第1作を初めて見た時の感覚的なもの、例えば未知の生物に対する恐怖、不気味さ、巨大さは十分表現されています。

 今まで何作も作られているゴジラ映画は、常に”原点回帰”を謳っていましたが、第1作ありきでは、原点回帰はありえない。庵野総監督の目指したものは真の意味での原点回帰ではなかったかと思うのです。大傑作、怪獣映画の原点を起点とするのではなく、解体して再構築された作品。それが今回の「シン・ゴジラ」だと思います。

いい加減長くなりすぎたので、次回に。


次は巨大生物の襲来に対する人間側の対応作劇について書きたいと思います。