乾くるみ著・文春文庫
裏表紙のあらすじで”「イニシエーション・ラブ」に続く2度読み必至、驚愕の恋愛ミステリー”とあり、「イニシエーション・ラブ」を読んだ人にとっては、ある意味既にネタバレをしています。
最後まで読むと、もう一度読み直しをしたくなるというのは間違いではありません。
最初のシーンは、結婚式当日。新婦は美しい女性、春香。しかしこの女性に対し疑念を挟む男性、正明。君は春香なのか、美奈子なのか。
そしてシーンは1年前、初めて春香と正明が出会った日から始まります。
先輩の紀藤に誘われてスキーに行くことになった正明は、先輩の彼女、尚美の友人という春香に初めて会う。美しく、控え目な春香に心を奪われつつも、自分は一介の家具工場の雇われ工員、彼女は大学院生と住む世界が違う為、その日限りの事と思っていた。
その後、正明のもとにハルカから電話がかかってくる。尚美からTEL番号を聞いたという。
お互いに惹かれあい交際を続ける春香と正明。
ある日、銀座でデートをしていると、40歳くらいの紳士に「美奈子。お前…お前、よくもだましたな!」と突然声を掛けられる。春香は怯えるがその男は続けて「歌舞伎町の《シェリール》だよ。本当に別人なのか?」と更にいう。
春香と見まごうほどに似ている美奈子というホステスがいる歌舞伎町の《シェリール》。
正明は、気になって出かけてみることにする。そしてそこには、あの男が言うように春香そっくりの女、美奈子がいた…。
美奈子の語る衝撃の事実…。
☆
清楚な春香と奔放な美奈子。他人も見紛うほど似ている2人。正明が好きになったのは春香だけど、美奈子にも同様惹かれていく。
「結局は顔かい!」と思うこともあるけど、ま、外観は重要な要素ではあり。ただし、性格もそれ以上に重要で、美奈子に惹かれつつも春香を一途に想う。
小説や映画、ドラマでは、二面性を持った人というキャラクターがよく出てきます。自分もないとは言えませんが、完全に違うキャラを演じるほど器用ではなく、どちらかというと表裏はない方だと思います。
世の中ではどうなんだろう。うまく使い分けをしている人いるんだろうな。
例えば、会社での顔、彼氏、彼女の前での顔、友人との顔、友人でも、それぞれのコミュニティ毎での顔が違っているなんて人もいるかもしれない。
特に男性にとって女性は神秘であって計り知れない。わからないことがあるから知りたいという事が、男女が惹かれあう要因だと思う。そういう意味では、私のような人間は、面白味ないかもしれません。
この物語は1983年12月31日から1年間のお話。この時代をリアルタイムに知っている人には判りやすいシチュエーションですが、今となっては携帯電話やLINEやSNSで彼女と繋がることができるので、固定電話しかない時代の恋愛を想像することは難しい、かも。。